離せない温度  4






一度味を占めてしまえば、やはりシチロウも他の男と変わらないのかもしれない。
それから、毎晩のように卯月に手を出した。
卯月の気が済むまで、何度も手で、口でいかせた。
卯月の顔が歪む。
羞恥に染まる。
恥ずかしいのか?
誰にでも抱かれてきたくせに?
それが、ますますシチロウを煽る。
どこかで止めろ、と声が聴こえる。
戻れなくなる。
戻る?
どこに?
卯月は何度もシチロウを誘う。
「して・・・いいよ?」
出来ない。
余裕を見せて、がっついていないように見せるのは、それでも大人の意地だ。
しかし、浅ましい煩悩が巡る。
快楽だけではない。
この幼さの残る、身体の全てを暴いてしまいたい。
セックスに慣れた身体。
恥ずかしがってはいても、快楽に繋がる身体。
いったい、どれだけ抱かれたらこんな身体になる?
幼い顔で、恥ずかしいからイヤだ、と泣く。
足を広げることを、躊躇って初心なところを見せる。
してくれたから、身体で返すという。
それを受け取ってしまえば、自分はどうなる?
今まで卯月を買っていた、男と同じになるのか?
卯月の中で、快楽だけを与えてくれるその一人に、なってしまうのか?
まだ、時折見せる一瞬の歪んだ表情。
泣いてしまうのか?
なにが、そうさせる?
どうして、泣く?
どうすれば、泣かないでいてくれる?
ただ、笑顔を向けてくれる?
愛情を向けるだけでは駄目なのか?
なにが、卯月に必要なのだ。
どうすれば、このままここに居てくれるのだ。
首に鎖をつけて、閉じ込めてしまいたい。
それが、本音だ。
隠しても仕方ない。
シチロウは、はっきりとその欲を感じた。
他の誰にも、手を出させない。
シチロウだけの世界で、飼い殺してしまいたい。
ペット?
善意を見せて留まらせておきながら、なにをしているのだろう。
シチロウは自分の感情に、おぞましさを感じた。
なにを考えている。
世の中を、人生を諦めているような子供に、なにを考えている。
卯月は知らないだけだ。
この世界が、どれだけ素晴らしいのかを。
幸福の時間が、どれだけ穏やかなのかを。
それを与えるのは、自分であってほしい。
どこかに躊躇と遠慮を残す卯月の仕草に、どうしようもない気持ちが込み上げてしまう。
酷い大人だ。
悪い男だ。
卯月を、どうしようと言うのだ。
このまま、閉じ込めて、シチロウだけの世界を見せて。
それが、本音だ。
シチロウは自分にそんな感情があると、初めて知った。
独占欲だ。
恐怖を与えるほどの、執着だった。
ミチルにさえ、こんな感情を向けたことはない。
ただ愛しくて、優しさを与えたかったミチル。
それが、好きなのだと思った。
愛していると思った。
愛していたのだ。
本当に、心から。
しかしどうすればいい。
卯月を見ると、抑えられない感情がある。
これは本当に、愛情か?
こんな気持ちになるのは、卯月のせいだ。
卯月の時折見せる仕草が、まだシチロウを落ち着かせないのだ。
安心して、手を離せないのだ。
気付けば、するりと逃げられてしまいそうで。
この感情が、もしかしたら出ているのかもしれない。
卯月は、気付いているのか?
ただ、快楽と優しい手だけを与える男が、本当は凶暴な雄だということに。

だから、逃げたのか?


to be continued...

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