不器用に交叉するだけで 9 心が埋まらない。 思うままにミチルを抱いたというのに。 何度も果てて、汚した。 奥まで触れて、壊した。 溢れる涙を、拭うことをさせなかった。 足りないのか? これでもまだ? 興味が尽きない。 心が惹かれる。 まだ、壊し足りない。 いっそ細い首に指を這わせて、そのまま力を入れてしまいたい。 苦渋に歪む顔。 呼吸を求める口。 見開いた瞳。 そこには、覆いかぶさるレキフミしか映っていないはずだ。 ミチルの世界はレキフミだけで終わる。 そうしてしまいそうな衝動が、確かにある。 いつまでも、レキフミを誘いかける。 してしまえ。 けれど、伸ばされた手が。 レキフミの手から、腕へ。そこから肩、背中へ。 回された手の、暖かさに。 レキフミはいったいどうしたのだろうか、と思うほど動揺にざわめく。 細い身体に腕を回し、軋むほど力を込めて。 何度犯しても足りない。 抱き殺したい。 抱き壊れてしまって欲しい。 そのまま、動かなくなってしまって欲しい。 ミチルから向けられる視線に、耐えられない。 壊しているはずなのに、心臓を握られているのは自分? ミチルは視線だけで、レキフミを壊してしまう。 どうして、そんな目で見る? レキフミはミチルを壊したい。 ミチルから向けられる視線は冷たくて良い。凍て付いていて良い。 深淵を突き抜けるほどの、鋭さであって良い。 それに見られていると、世界はレキフミだけだ、と実感出来る。 身体は白かった。 傷ひとつない四肢。 背中から腰が、しなやかに撓る。 「・・・っい、やだ・・・っいやだ、見るな・・・っ」 ミチルを遮るものは何もない。レキフミが想像していた通り、ミチルの身体はレキフミを簡単に高まらせる。 腰を抱えて深く身体を沈めた。押し返そうとする腕を、ベッドへ縫い付けて身体を屈めて閉じようとする足を阻んだ。 泣き顔が歪んで、レキフミから逃げ出すように背けられる。 逃がすはずがない。 「見ますよ、全部。どこも、貴方の全てを」 嗤いながら、レキフミは腰をゆっくりと揺らし始める。 「・・っ、ん、っ」 「気持ち良いなら、声を上げてください。泣いて見せてください」 「・・・っ」 「良いでしょう? ほら、こんなにも深く・・・」 「・・・っん、あ・・・っ」 充分に慣れたミチルは簡単にレキフミを飲み込んでゆく。 埋まってゆく自身から、ミチルの中心で震えるそれが濡れて、溢れ出している快感に視線が動く。 「う、あ・・・っや、やめ、ろ、」 「止めませんよ、ほら、もっと入る・・・」 「うぁ、あ、あっ、い、や、いや、だっ」 「嘘吐き。ミチルさんの厭は、良いってことですか?」 「ち、ちが、あ、う、やめ、や・・・」 「良い、んでしょう・・・?」 「い、や・・・こわ、れる・・・っ壊れる、壊れる、いやだ・・っ」 「壊したいんですよ・・・」 「あ、あ・・・っいや、やめて、頼む、から・・・っ」 「レキフミです」 「あ・・・っ」 レキフミは押さえつけていた手から自分のそれを離し、背けたミチルの頬を包んだ。 顔を寄せて、涙の溜まった目を覗き込む。 「レキフミだと、言っているでしょう」 「・・・っ」 「誰に壊されているんですか? 誰に頼んでいるんですか?」 その先に、映っているのは自分か? 壊しているのは、誰だ? その世界に、レキフミしかいない? 覗き込んだ目を真っ直ぐに見返された。 瞬くと、溜まった涙が頬を伝う。 どうして汚れない? 零れた涙がレキフミの指を伝う。 どうして綺麗なままなんだ? 湧き上がる感情は判る。 嗜虐心だ。 どうしてこんなにも心が押さえつけられる。 あとどのくらい壊せば気が済む? あとどれだけ抱いたら、ミチルに飽きる? こんな酷い男から、開放してやれる? 答えなど見つからない。 先など一切、見えてこない。 もう、ただ抱くだけだ。 壊してしまうだけだ。 どれだけこの涙を見たら、気が済むんだ。 「レキ、フ、ミ・・・っレキフミ、レキ・・・っあ・・・あっ」 「ミチル、さん・・・っ」 レキフミは細い肩に腕を回して抱きしめるように身体を重ねた。 レキフミを受け入れるミチルの中へ、深く何度も熱い楔を打ち込む。 「う、あ・・・っレ、レキフミっレキ、フミ・・・っいや、いやだ、こわ、れる、壊れる、から、いやだ・・・っ」 「まだ、です・・・まだ、足りない・・・っ」 「レキ、フミっ、レキフミ・・・っう、あ・・・あ・・っも、う・・・っ」 ぴったりとくっ付いた身体の間で、反り返ったミチル自身がレキフミの引き締まった腹に擦れてそこを濡らす。 只管に打ち込み続けるレキフミの抽挿はただ激しくなるだけだ。 「ミチルさん・・・、ミチル、さん」 「あ、あ・・・っ」 深くで果てても、身体の間をミチルが濡らしたとしても、レキフミは終わりを感じない。 総身をミチルから引き抜く瞬間に、すでに硬く戻ってしまう。 ぐったりと力のない身体を思うままに開かせて、 「まだ、終わりませんよ」 額に汗を浮かべながらも、思考は冷静だ。 「れ、キフミ・・・もう、無理、だ、もう、でき、な・・・」 「そんなことを言って、ミチルさんは本当に嘘吐きですね」 「う、そじゃ、ない・・・っ無理、もう、駄目だ・・・っ」 「駄目じゃないですよ、ほら・・・」 「あ・・・っ」 レキフミはさっきまで自身を埋めていた奥へ指を伸ばし、ミチルがすぐに反応する箇所を見つけてしまう。 爪の先で引っかくようにしてやると息を飲むようにミチルが反応する。 「ここでしょう、イイとこ・・・ここ、もっと突いて欲しいでしょう?」 「ん・・・っん、う・・・っ」 震えながら全身を堪えるミチルに、レキフミは熱くなる身体とは裏腹に冷静になる思考に気付く。 「俺の先がここに触れて・・・アレで擦って、引っかいて・・・ね?」 「や・・・っいや、だ・・・っ」 「何が厭なんです」 レキフミはミチルの片脚を大きく持ち上げて、もう片方を跨いだ。 横になった腰の状態のままで、すでに大きく張り詰めた自分を押し込む。 「あ・・・あ・・・っ」 「ほら、俺を美味そうに喰ってますよ」 「レキフミ・・・っ」 悲鳴のような声だった。 ミチルの声だけが、レキフミの奥へと響く。 背中に熱を感じた。 腕を回されたのだ、と理解したときには、レキフミは呼吸が止まっていた。 |
to be continued...