愛し愛され  ―恭司―  3




驚いた。

今、聞いた台詞を、もう一度考えたけれど、信じれなかった。
コウキさんは、呆れた顔で俺を見て、それから顔を背けた。
「ほら・・・大人をからかうなよ、帰りなさい」
聞いて、俺はやっと声が出せた。
「う・・・そだろ?!」
「嘘じゃないよ」
「見えねぇ!」
どう見たって、俺と違わないか、二、三上にしか見えない。
在り得ないくらい、童顔過ぎるだろ。
「君に言われなくても、自分の顔が年相応に見えないくらい、知ってる」
「顔だけじゃねぇよ」
「は?」
「その身体、すげぇ綺麗すぎる、肌とか、ガッコの女どもより、すげぇ綺麗・・・っ」
言葉の途中で、コウキさんの手が飛んできた。
避ける間もなく、顔に当たる。
「・・・ってぇ、コウキさん、手ぇ早いよ」
「早くしてるのは、お前だろ・・・!」
「俺はホントのことしか、言ってない」
「何が、本当だよ・・・ふざけたこと言ってないで」
「ふざけてねぇ」
俺は、目の前にある身体を見た。
その服の下を、すぐに思い出せる。
どこも見たけれど、どうしても三十代には見えない。
俺の視線に気づいたのか、コウキさんは視線を外した。
身体を背けて、靴を脱いで部屋に上がる。
「君は、帰りなさい」
「いやだ」
「いやだ、じゃない・・・いい加減、聞き分けてくれないか」
「聞き分けなんて、良くなるかよ」
「だから、子供は嫌いなんだ・・・」
ため息を吐いたコウキさんに、俺は苛つく。
子供子供って、子供のなにが駄目なんだよ。
好きってだけじゃ、いけないのか?
コウキさんの目は、それだけじゃ駄目だって言っている。
なら、何が必要なんだ?
あんたを手に入れるのに、俺は何をすればいいんだよ。
俺が年下なのは、俺のせいじゃない。
だけど、俺に出来ることは、何でもするつもりだ。
「もう、僕に構うな」
「それは、無理」
「無理じゃない。学校に行って、同じくらいの女の子と遊んで、そしたらすぐに、僕なんか忘れる」
「忘れるわけねぇだろ!」
「忘れるよ、君は、ただ珍しいだけだ。男の身体が」
「珍しいだけで、こんなに夢中になるか! 何回も、抱けるわけねぇだろ!」
どう言ったらいい?
何をしたらいい?
俺が居なくなって、あんたがまた、別の男と寝るって考えただけで、腸が煮えくり返るんだけど。
「俺、マジで、こんなに人に執着したことないんだぜ?」
「・・・だからだよ」
「あ?」
「手に入らないから、手に入れたくなるんだ。僕が、欲しいわけじゃない」
「そうじゃねぇよ! あんただから、手に入れてぇの!」
自慢じゃないが、あんまり人に関心がない俺だ。
手に入らないなら、興味なんか湧かない。今までは、そうだった。
でも、諦めれない。
なんでかなんて、俺が聞きたい。
もう、俺ん中、あんたしか居ない。
頼むから俺に、堕ちてくれ。


to be continued...



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