愛し愛され  ―皇紀―  2




たっぷりの泡を付けた手が、身体をなぞる。
皇紀は力の入らない身体で、それを受け止めた。
「ちょっと、やめ、ろ」
手でそれを押しとどめようとしても、滑らかにそれは動くだけだ。
ズボンだけを身に着けた男は、光の中で改めてみると、少し幼い。
絶対に、年下だ、と確信した皇紀は心の中でため息を吐く。
いくら酔ってたとはいえ、寂しかったとは言え、自分が年下に手を出したことが、とてもショックだった。
その年下の男は、自分より大きく、その身体にあった手が、皇紀の身体を弄る。
服が濡れるのも気にせずに、バスタブに入り込んで、皇紀の間に入り込み、手をその間に埋める。
「や、やめ・・・っん、」
濡れた手が、指が確実に皇紀の奥を探る。
抵抗もなく中に入って、昨日覚えてしまったポイントを擦りあげる。
「ちょ、ま・・・ああっ」
その動きの速さは、男を抱いたことがないなんて、嘘だ、と思わせるほどで、皇紀はキッと目を強くして睨みつけた。
「やめなさい、も、こら・・・!」
「・・・あんた、それ、なんのわざ?」
「は・・・・?」
「そんな濡れた目で、睨まれたら・・・止まらねぇだろ、普通」
「なにを・・・!」
皇紀は自分がどんなに艶を放っているか、自覚がなかった。
一晩中攻められた身体は憂いを帯び、そしてまた、同じ手によって高められている。
「あ、やぁ・・・っ」
性急に求められて、男に慣れた皇紀は、それをすぐに受け入れてしまう。
首を振って、違う、と思うのに、身体は正直に反応する。
もっと欲しいと誘う。
「ん、ぁ・・・っ」
奥まで入ったその瞬間に、皇紀は思わず仰け反る。
その誘うような首元に、男は思い切り噛み付いた。
「あ、あぁ・・・!」
荒い息と、恥じ入っているのに殺しきれない声が、バスルームに響く。
背中にシャワーを浴びる男の背に、手を回してしまう皇紀は、すでに自我が飛び始めていた。
目から流れる涙は、生理的なものと、悔し涙が半々で、それを解っているのに、皇紀は自分より大きな年下の身体にしがみ付いた。
「・・・名前、言って」
耳元で言われて、皇紀は身体を固まらせる。
「や・・・!」
「名前、言いたい・・・。教えて」
皇紀は首を振る。
嫌だった。
それをされると、もう戻れない気がする。
しかし、して欲しい気持ちが湧き上がる。
皇紀は縋り付くようになりながらも、唇をかみ締めた。
でも、切なく聴こえるその声に、崩れた。
「・・・な、お願い・・・」
涙が出た。
なんでこんなに悲しいのか解らなかったけれど、皇紀は止められなかった。
気付くと、名前を言っていた。
「・・・コーキ、さん・・・コーキ・・・」
「ん、んぁ・・・っ」
呼ばれて、湧き上がる感情なんなのか理解する前に、皇紀は理性をなくした。


to be continued...



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