恋愛体質  4




「いやぁ・・・っ」
泣きながら、腰振るの反則だと思う。
いいのか、悪いのか・・・・
「だめ・・・っもぉ、壊れちゃ・・・っ」
「・・・っ」
こ・・・わすわけ、ないだろ・・・!・・・・・多分?
そんな可愛い声で言われて、止めれるはずもないし!ますますがっついてしまう。いくら抱いても、足りない。終わらない。
「先輩、せんぱい・・・っ」
泣きながら、擦り寄られて・・・・うわ。もー無理。
飛んだ、俺も。





しばらく、俺は頭を冷やした。
どうも、感情的になりすぎてる。
薫が無知なのは、知ってるけど、知らないってのもかなり悪い。 理解したつもりで、大人しく我慢して待っているつもりだったのに。目の前にすると、きっと俺は抑えられなくなるだろう。
落ち着け。相手は、薫だぞ?バージンはバージンでも、あの薫だぞ?セックスの手順ひとつ知らない、子供だぞ?
それでも、俺を好きだと言ってくれたのに・・・
俺も子供だ。
我慢できずに、切れてしまった。
それから、少し間が開いた。
タイミングがわからなくて、校内で見かかるけれど声をかけれない。
あのときの言葉は嘘で、本当はそんなこと思ってないなんて・・・・言えるはずもない。
嘘じゃない。したくてしたくて、堪らないのが、事実だ。
どうしようもなくなって、周りの何もかもがうざくなる。鬱陶しくなる。誰に声をかけられても、遊ぶ気にもならない。
本気で悩んでいたときだった。薫から連絡が入ったのは。
このときの・・・・浮かれようが、解るだろうか。
必死で冷静な声で答えたけれど、薫にばれただろうか・・・・





結果的には、ばれてなかった。
けれど、このときの俺はかなり、後ろ向きだった・・・自信がなくて、ちょっと・・・拗ねていたんだろうな。
薫が来る、と解ってたときに、いきなり羽崎が来て驚いたけれど・・・ちょっと、薫に帰られそうになって慌てたけど。
羽崎には、確かに俺が悪いのかもしれない。それまで特定の相手がいなかったから、相手が羽崎でも気軽に抱いた。遊んだ中では、一番多かった。けど、でも・・・遊びのつもりだったんだ。
本気になって初めて、自分のしてきたことを悔やむ。
過去なんか全部、無くなってしまえばいいのに。
でも、俺は充分現金だ。
拗ねて見せて、薫が動揺しているのがわかる。解ったから、また増長してしまう。
泣きながら、全身で俺を好きだと言う。
何でお前、こんなに可愛いんだろうな・・・?
そこからは、俺はもう幸せでいっぱいだった。
もう、どうもこうもない。
我慢してたかいは、充分あった。
つまり、気持ちの問題だったのかな?薫の気持ちが、漸く俺に追いついたんだろうか?
まぁ、そんなことはどうでもいい。素直な薫は、どうしても素直なままだ。それがまた、俺を煽る。

ああ、原田。あんまり話したことはないけど、蜂蜜有難う!
心から感謝した。





俺は約束を守った。週末、薫を泊めた。朝まで、抱いていた。
ずっと泣かせて、ずっと攻め続けた。
いつか果てるかもしれないと思っていたのに、全然俺は止まらなくて、気付けば朝だった。
薫が、倒れこむように眠りについた。俺は、少し不安になってきた。今更だけど。
途中、もう駄目だと何度も言われた。けれど止めれなかった。
どうしよう・・・・もう、してくれないって言われたら。
や、やりすぎたかな・・・
頼むから、嫌わないで欲しい。
そう願って俺も、薫を抱きしめて眠った。





「薫・・・薫?」
俺は少し肩を揺らして、薫の顔を覗き込んだ。夕方に目を覚ました俺は、終わったままでそのまま寝てしまったことを思い出して、ベッドの惨状をちょっと後悔した。
どろどろになった身体とベッド。
俺は軽い身体を抱き上げてユニットの狭いバスタブに向かった。
身体を流して、がっついた、と解る薫の身体にまたちょっと・・・手が伸びかけたけどさすがに意識がない相手だと思って止めた。
シーツを取り替えて、またそこに薫を寝かせた。
けれど、薫は一向に目を覚まさない。さすがに、ここまでしても起きないとなると・・・ちょっと不安になってくる。
やりすぎたとは、思うんだけど・・・・思うんだけどな?
身体が揺れると、小さく薫は声を出した。
「・・・・ん、」
苦しそうに眉を少し寄せて、身じろぎをする。
良かった。
マジで、抱き殺したかと思った・・・・
「薫?」
もう一度呼ぶと、薫の重たい瞼がゆっくりと開いた。
そして、何度か瞬きをしてから、俺と視線が絡む。
「・・・大丈夫、か・・・?」
暫くぼんやりとした顔で見つめられて、ドキドキしてくる。疲れた身体が、気だるげな雰囲気が、俺を無意識に誘っている。
だから、やばいよなぁ・・・
自制に頑張ってる俺に、薫はなぜか、にっこりと笑った。
「・・・・・っ」
それ、なに? なぁ、いったい、なんで・・・
俺をどれだけ試してるんだ・・・?
「か・・・薫? どう、した・・・?」
「・・・だ、って」
薫の声は掠れていた。 当然か。
しかしその声すら、今の俺にはやばい。
なのに薫は、
「嬉しい・・・・」
「・・・は?」
どういう、意味だ?!
「約束、守って、くれたから・・・」
や、約束・・・? 俺が? どの?! いつ? 守ったって、いつ?!
動揺する俺を、薫は変わらず笑って、
「起きてすぐ、傍に居てくれたから・・・」
「・・・・・」
ああ・・・・・そういえば、そんな約束もしたような・・・・ってか!!
いいのか! そんなことで、いいのか?!俺をそんなに喜ばせて、いったいどうするんだ?!
これ以上増長させて・・・・いったいどこから、突き落とすつもりだ?!
薫の、俺にはトレース出来ない思考に、俺はまだちょっと怖い。
その可愛い口から、今度はなにが飛び出すのか・・・・・怖くてしかたない。
参ってる俺に、薫は力なく手を伸ばして、
「・・・せんぱい、キスして・・・? おはようの、キスしたい・・・」
「・・・・・っ」
だ、駄目だ・・・我慢、出来ない。
俺は言われるままに、誘われるままに薫の唇を奪った。
「・・・んっ」
いつまでも柔らかい唇に、俺は夢中になってしまう。
寝転んだままの薫の唇を何度も貪って、漸く俺の気持ちが落ち着いて離したときは、また薫はぼうっとしていた。
だから、その顔が、やばいんだって・・・
俺は慌てて思考を切り替えた。
「薫?」
「・・・・・?」
とろん、とした視線が俺を見つめる。
・・・・クソ。くじけるな、俺。
「その・・・嫌じゃ、なかったか・・・?」
「・・・なにが、ですか・・・?」
「いや・・・その、昨日・・・・」
不思議そうに見上げてくる薫は、起き上がれないほど体力がない。そんなにしてしまったのは、俺だ。
嬉しく思っ・・・いやいや、申し訳なく思ってしまう。
「ちょっと、やりすぎたかと・・・動けない、だろ・・・? 途中で、お前もう嫌とか無理とか・・・・・言ってたし」
やばい。
声を思い出した。脳裏に沁み付いてる。身体が、疼く・・・
ああ、俺はヘンタイだよ。
泣かせて泣かせて、それでも抱きたい。これ、そうとう末期だよな・・・?
「・・・・どう、して?」
俺が落ち着け、と自分に言い聞かせていると、薫は首を傾げる。
「ど、してって・・・だって、止めなかった・・・ろ?」
嫌だったんじゃないのか?
薫は少し考えて、思い出したように頷いた。
「ああ・・・・そんなこと、言ったような・・・?」
「・・・・・言ったんだよ、何度も、お前は」
「あや、です」
「・・・・は?」
どういう、意味だ?
眉を顰めると、薫は笑って、
「だって・・・なんて言っていいのか、わかんなくて・・・確かに、途中から、もう駄目かもって思ったんですけど・・・・でも、駄目じゃなかったし。続けれたし、先輩にいっぱいしてもらえたし・・・先輩、良かったですか?」
「・・・・・・・・」
撃沈した。ベッドに、顔を埋めた。
よ、良く・・・良くないはずがない!!
「お前なぁ・・・・」
疲れた声を出すと、薫は少し不安そうな顔で、
「だ、駄目でした・・・? やっぱり、僕じゃ、足りない・・・?」
「そんなはずないだろ!」
勢いで答えた。
そんなはずは、ない。そういう意味じゃ、ない。
「足りたし、良かったし、良すぎて、まだ止まらなくなりそうだし・・・!」
「・・・・ほんとう?」
本当ですとも!ああほら、そんな可愛い顔で見るな。また理性が飛ぶだろ!!
俺は軽く頭を振って、
「えっと・・・なんて言っていいか、解らないって?」
話を変えた。
それも俺には良く解らない。なにが、言いたかったんだ、本当は。
薫は少し考えて、
「あの・・・えっと、なんか、もう、あれ以上すると、本当に、どうにかなっちゃいそうだったから・・・・そういうときは、なんて言うんですか?」
「・・・・・・・」
質問を間違えた。こんな答え、返ってくるとは・・・・
やばいな。また、抑えられなくなりそうだ。
「そうだな・・・そういうときは、なら、」
俺は少し、悪戯のつもりだった。
有り得ないと思いながら、つい、口から出た。
無理だろうと思っていたし、まさか・・・
でも、俺の考えが甘かった。
薫はどこまでも、無知で素直だったのだ。
「・・・イイって、言って? もっと、とか、イイって言って」
「・・・・・」
薫は少し俺の顔を覗き込んだ。
やっぱり、それは行き過ぎたか・・・?
冗談だ。
て、言おうとした俺に、
「・・・はい」
「・・・・は?!」
「はい。イイって、言います・・・もっとって、言えばいいんですね?」
「・・・・・・・」
答えを教えてもらって、嬉しそうな薫が俺に笑いかける。
俺はまた、思考が世界一周くらいした。
「イイ」って言って、泣きながら俺を求める薫が・・・・・・・

  だから、やばいだろ!!

ごめん、悪い。
もう一回、抱かせろ。


fin



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