恋愛体質 2
「せん・・ぱい・・・っ」 吐息のように、誘うような声に、俺が抑えていられるはずはない。 「あ・・・っああぁっ」 後ろから押し込んでいたのに、上体を屈めて抱きしめる。 少しも離していたくない。全身で薫を抱いていたい。 「・・・っ薫・・・」 「いや・・・っあぁっ・・・!」 この感情、なんて言うんだろうな? 溢れそうなんだけど。 俺は大人しくお付き合いを始めた。 なんとゆうか。 今までの俺の恋愛を全部捨てて、俺のしてきた行動を全部改めて。そんな付き合いかただ。 周りが「どうしたんだ」と笑っているのも解ってるけど、放っておく。そんなことはどうでもいい。 俺は目の前の恋愛をしたこともない、やり方も知らない薫を落とすのに必死だ。 たまにキスを求めるのは俺からで、薫からは一度もなかった。ちょっと不満があったけれど、薫を見ていれば解る。 まったく、何をしたらいいのか理解していないのだ。 この激鈍な生き物を、どうやってその気にさせたらいいんだ? 俺は、いつまで禁欲してるんだろうな・・・・・ 俺も驚くところから動いたのは、その後のことだった。俺の教室まで、薫が来た。 初めてだ。 驚いたけれど、嬉しくないはずはない。そのうえ、一緒にサボって俺の部屋に行きたいと言う。 このとき、俺の脳裏は一気に地球一週くらいの勢いで回った。そこで予想されることの出来事を想像して、固まった。けれど、大人しくそれを吹き飛ばす。 だって有り得ないだろ。これまでの肩透し具合から、喜ぶのは早い。 この恋愛音痴は、何を言い出すかは口にするまで分からないからだ。 なんでいきなり薫がそんなことを言い出したのかとかは、このときは俺は一切考えなかった。 嬉しかったからだ。薫が俺に関心を持ったことが。ただ、それだけ。 それから薫が言ったことは、また俺を地球半周させるくらいの勢いで動揺させた。 俺はこの高校に入ってから一人暮らしをしている。理由は、家からかなり遠いから。それだけだ。 それが、このときほど嬉しかったことはない。 そして、このときほど辛かったこともない。 「先輩、して下さい」 俺は耳を疑った。 なんで?どうしてだ?いったいどっから、そんなことになる? 俺は毎日大きくなる欲望を抑えようと、必死になっているのに。 それが、出たのか?抑えられなかったか? 「して・・・下さい」 うわ、待て!んな顔するな!! まず顎を押さえて柔らかい唇を貪って後ろのベッドに倒してから細い脇をなぞりあげて薄い胸に舌を這わせてちっさくて可愛い乳首嘗めて何度も吸ってそれから腰に手を・・・・・・ いや待て!落ち着け、この状況はおかしいだろ! 暴走しかけた脳みそを抑えて、俺は必死に理性を働かせる。 どう考えてもおかしい。お前、俺を好きじゃないだろ?でも、俺はお前を好きだ。 だから・・・・・挑発してんじゃねぇよ。 「先輩、巧いんでしょう? 痛くないんでしょう?」 キレた。なにかが、もうキレた。 なんで俺、ここまで言われて大人しくしてるんだろうな?やっちまえばいいんだ。 したいんだし、欲しい身体が目の前にあるんだぜ?しかもして下さいと言われて、止める理由がない。 なのに、相変わらず細い身体は俺のすることを何もかも堪えているようで。泣き声すら我慢して。 いったい何がしたいんだよ?!したくないなら、嫌ならんなこと言うなよ!俺がせっかく我慢してやってんのに、この俺が! 薫と出会う前にすでに一ヶ月してなくてなのにそれからもしてなくて・・・っ、記録、更新中なんだけど? 好きでもないくせに、俺に抱かれるな。俺は、こんなに薫を思ってるのに。俺が可哀想だろ? そして。 その理由を問いただして、俺は世界を周るどころか、世界が止まった。 羽崎? と、会ったんですか?会っちゃったんですか? 確かに、最近復帰してまた俺の周りをうろちょろしてたな・・・してたけど、それだけだ。 前のように遊んでやろうとも思わない。 でも、会ったんだな? 俺の脳裏は復活してすぐ、また高速で周り始めた。 な、なに言われた?!なにを知った?! やばい、どれを羽崎は言ったんだろう? 初めてやったときのことか? それとも最近マンネリだと言うと自分から薬を飲んでかなりやばいくらいに誘ってくれたときのことか? それか一日何回できるかなんて馬鹿なこと試してみたときのことか?! 焦った俺に、薫の声が突き刺さった。 それまでのことなんか何もかも吹き飛ばすくらいの、強風が俺を吹き抜けた。 「あ、遊びじゃないなら・・・っどうして、僕の傍にいるんですか? なにも、しないのに・・・っ先輩、セックス好きなんでしょ? なら、他の人でしないで、僕でして欲しい・・・は、羽崎ってひとと、しないで」 やばい。 勘弁してくれ・・・ 俺は我慢できずに薫を抱きしめた。 どうしよう。やりたい。押し倒したい。このまま全部喰ってしまいたい。 いや待て、落ち着け俺。そんなことをして、怖がらせたら・・・・・・終わりだ。何もかも消え去る。この回ってきた幸運を掴み損ねる。今の今まで耐えてきたんだ。あと少し、落ち着け俺。 神様有難う。我慢して頑張ったら、本当に良いことって、努力って報われるんだな・・・。 もう少しで、薫は落ちる。俺のものになる。 全て。 そう、思っていた。このときの俺。今思っても、可哀想になる。自分で。 俺のことを好きだと気付いた薫は可愛かった。 他の人としないで、なんて甘いことを強請るのも可愛かった。 自分が頑張るから他の人としないで、なんて・・・・ 雲行きが怪しくなってきたぞ? どういう意味だ? それ。 いったいお前、誰に何を吹き込まれた?!俺は、まったくの潔癖だぞ?! したくてしたくてしょうがない俺に、固まったままの身体で俺を殺すような言葉を吐く。 頼むから、許してくれ・・・・ したいのに!やりたいのに!お前の中に入れたいのに!! 「セックスって、どうやるんですか」 俺は倒れるかと思った。 俺が今までしてたことは、なんだったんだ?まったく、通じてなかったんだな? 感じてもなければ、なんでしてるんだろう、くらいにしか思ってなかったんだな? この可愛い顔は、可愛いだけで、・・・・・可愛いだけでっ 俺を誘うくせに、その頭の中には一切なにも入っていないんだなっ?! セックスなんか、口で教えたくない。 ただもう、触って嘗めてお前の中グチャグチャにしてやりたい・・・! そんな単純な欲望を、薫は可愛い顔で潰した。綺麗にあっさり均してくれた。 頼む。泣きてぇ・・・・ 精神的に疲れきった俺に、薫はさらに追い討ちをかける。 他の野郎に教えてもらうなんて、許せるわけねぇだろ! 俺が教えるから! 頼むから何も知らないなら知らないままでいてくれ・・・っ 萎えた。 力尽きた。 その俺に、薫は可愛く拗ねて、 「・・・キス、したいです」 ってお前さぁ、したいのかしたくないのか・・・・・・多分、理解していないだけだろうな。 ああもう、いいよ。俺が我慢すればいいんだろ。泣いて涙を飲めば、済むんだろ。 「気持ち良い」 なんてはっきり言われて、嬉しくならないはずはない。 おもいっきりキスをした。してやった。 これくらいしか許されないなら、とろとろになるまでしてやる。それで我慢出来るように、貪り尽くしてやる。 「あ・・・っふ、んぁ・・・」 口から漏れる、吐息に俺は・・・・挫けそうだ。やばい。このまま、この状態なら、出来ないかな・・・?しても、大丈夫かな・・・? 淡い期待を抱いた俺を、また薫は打ち砕いてくれた。 ああ、もう、望みなんか持つなってことかよ。 「・・・このまま、ぎゅってしててください」 ・・・・・・はい? ぎゅっと? このまま? 俺の腕の中で? いや、ちょっと? そんなに安心した顔で・・・・抱きつかれても、困るんだけど・・・・・? 「薫? ・・・っまえ、この状態で・・・っおい?ね、寝たのか? マジで? 寝れるのか?!」 ・・・・・・・寝・・・・・・てしまった。 寝られてしまった。 一定の寝息が、俺の身体に触れて。 うわ・・・やばい。 おちつ、け、俺。 落ち着け、ここで、やったら絶対に泣く。泣いて嫌がって、嫌われる。だから、落ち着け。 力の抜けた頃に、薫の腕を離して、安らかに眠ってるのを、起こさないように、ゆっくりとベッドに下ろして・・・・ 落ち着けるかぁ!! その夜俺は、地獄を見た気がする・・・・・ |
to be continued...