ウソツキ  12




力いっぱい、山井に抱きしめられて、俺はそれでも何も返せなかった。
反応なんか、出来ない。
だって何がなにやらわからなくなって、どうしたらいいのか動けなかったのだ。
「・・・葉一?おい・・・どうした?」
固まった俺を、山井が心配そうに覗き込む。
視界にその顔が入ったら、涙が溢れた。
恥ずかしくて、慌てて拭った。
「あ・・・あの」
「なに?」
「あの・・・俺、」
「うん」
「・・・山井さんが好きです」
俺の言葉を受け止めた山井は、驚いたように目を見開いて、それから大きく息を吐いた。
「お前・・・なんでそんな凶悪な・・・」
「凶悪?」
「・・・押さえらんないんですけど。このまましてもいい?」
「このまま?」
「このまま、抱いていい?」
はっきりと言われて、俺は顔が熱くなるのが判った。
 ――そ、そっか・・・そうゆう意味やんな・・・
「あ、えと・・・でも、俺、したことないから・・・」
 ――どうすんのかも、判らへんのやけど・・・ええのかな。
「やったことあるって言われたほうが腹立つ」
「腹立つ?なんで?」
「・・・なんでも。頼むから、これ以上煽るの止めろ」
「煽る?」
 ――あおるて、煽る?どうやったら、そんなこと出来るの・・・?
俺は少し考えて、
「あの・・・じゃぁ、してください・・・?」
山井を見上げた。
山井は俺の肩口に頭を沈めて、少し震えてるみたいだった。
「や、山井さん・・・?え?ちゃうの?これじゃない?なんてゆったらええの?」
「・・・お前さぁ、なんでそんなこと言うわけ。何されてもいいのか?」
 ――何て・・・何するんやろう?
俺のその顔に、考えが出ていたのか山井は、
「・・・イヤだったら、そう言えよ。早いうちなら・・・止めれるかもしんねぇし・・・」
止めれなかったらごめん、と山井は続けた。
俺は、その真剣な顔に、
「・・・山井さんなら、何されてもええけど」
素直に、答えた。
「・・・・・・限界」
山井はそう呟いて、そのままソファに倒れこんだ。
それでも、重なった唇は凄く優しかったし、俺は本当に、山井になら何をされても構わないって、思ったのだ。


結果的に、俺の想像をちょっと超えていたけど、朝になっても動けなかったけど、帰ってきた一葉の非難を山井は全部受け止めてくれたし、俺は漸く、山井の気持ちを素直に受け入れることができたから、一人だけ幸せ気分で、そのまままた眠ってしまった。


fin



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