極悪外道 10
「イかせるだけなら、簡単だが」 さらりと言われた言葉に、背中がぞっと震えた。 そして、羞恥と言うより怒りで顔が熱くなる。 「な、に言ってんだよ!」 「このまましてもつまらないな、と言っている」 「はぁ?!」 怒っているのを隠さないのに、夏流の声は変わらない。 ソファに座る夏流の膝に、足を跨がせて座る。 その格好のまま、言いあっている。 この状況すら本当は心臓が落ち着かないのに、夏流はいつもと全く変わらない顔で、 「手で、指でしてやろうか」 「・・・・・っ」 珍しく――本当に珍しく、自ら誘った行為なのだが、顔色も変えずにその手のひらを見せつけられて、 「・・・っも、いい!」 赤くなった顔は、怒りを超えて悲しくなってしまった。 その眼尻が潤んだことも自覚して、見られたくない、と身体を離そうとする。 「待て」 「なんだよ!」 しないんだろ、とすぐに引き留めるように腰を掴まれた手を押し返す。 しかし大きな手が、それで離れてくれるとは思ってはいない。 「セックスしよう」 「・・・・はあ?!」 退かせようとした身体を引きとめられて、今度は膝の上に夏流を背もたれにして座る格好になってしまった。 その状況で、なぜか甘く聞こえる声が届く。 したくないんじゃなかったのか! 態度の変化も気持ちの変化も付いていけなくて思いきり睨みつけると、誰より綺麗で、誰より意地悪な顔を微笑ませた夏流が居た。 「お前の遊びに付き合うつもりはないが、お前としたくないはずはない」 「・・・・・・」 あれ? バレてる? なんで? 友達と賭けをしたのが、バレてるみたいだ。 誘ってどれくらいで落ちるのか――なんて、どうして乗ってしまったんだろう。 この男に、勝てるなんてどうして思ってしまったんだろう。 この顔に見つめられて、落ちないはずはないのに。 だから悔しくて、抵抗できない代わりに口を開いた。 「・・・バカ夏流」 「馬鹿になるまで、してやろうか?」 頼むから、止めて。 |
to be continued...