極悪外道  6




その手が、知らない手に思えた。

いつもと同じはずなのに、見えないだけで、恐怖が溢れる。
なのに、触れられると反応してしまう。
そんな自分が、とても嫌だ。
「・・・どこが、イイ?」
埋め込まれた指が、奥を探してただ、動く。
「あっぁ・・・っ」
解ってるはずなのに、どこに触って欲しいか、知ってるはずなのに、絶対にそこには触らない。
改めて、探されるその動きに、身体が震える。
「や、あ・・・っだめ、や・・・っ」
「・・・どこ? 教えろよ・・・」
知らないつもりなのか、耳元に聞こえるのは、確かに慣れた声なのに、その言葉と、指に、知らない男が脳裏に浮かぶ。
顔が定まらないけれど、違う男に思えてしまう。
嫌だ。
こんなの、嫌だ。
涙で、視界を塞いだ布が濡れてゆく。
首を振って、相手にしがみ付いた。
その香りが、いつもの煙草と香水で、少し心が落ち着く。
だから、起き上がって離されないように抱きついた。
「こら・・・なんだ」
「・・・っ」
解ってるはずなのに、揶揄う酔うな声に、首を振る。
「や・・・嫌、だ」
「試せないだろ」
試さなくてもいい。
そんなのは嫌だ。
「なつ・・・夏流が、良い。夏流じゃなきゃ、やだ・・・」
だから、これ、取って。

ちゃんと、抱いて。


to be continued...



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