感情





身体が熱い。
繋がっているところから、全身に熱が伝わる。
繕の形を、もう覚えてしまっている春則は、最後を迎えようとしているのに気づいて、自分も我慢が出来なくなった。
「あ・・・っつ、」
胸に伸びてきた手が、その突起を摘んで、その行動に春則は思わず先に放ってしまう。
中が、絞められたことで、その中に繕が注ぎ込んだのも解った。
「ん、んん・・・」
引き抜かれるその動きも、今は敏感になる。
荒い息を落ち着けようとしながら、春則は頭の中で哂った。
結局、自分から連絡を取った。
仕事を持っていって、すぐに呼び出した。
先に待っていたホテルの部屋に、繕が着くなり、ベッドに押し倒した。
「溜まっているんだ・・・どうにかしてくれ」
擦れた声で、誘う。
繕は行動で答えた。
他には、何も言わない。
でも、それでいい。
春則はすでにベッドから降りようとしている繕の背中を見た。
そのままシャワーに向かう体を、見た。
ストイックなスーツ姿からは想像できないくらい、引き締まっている。
これは女が惚れるよな、と春則は思いながら、目を閉じた。
いつの間にか、寝てしまっていたらしい。
頬に触れられて、気づいた。
「・・・起こしたか」
すでにスーツを着込んでいる繕がベッドに座って春則を見ていた。
「・・・寝てたか?」
「ああ・・・でも、このまま寝るんだろう?」
「・・・ああ」
「おやすみ」
繕は言って、立ち上がる。
春則はそれを、ベッドに転がったまま見送る。
ドアが閉まる音を聞いて、枕に顔を埋めた。
「・・・クソッタレ」
目が、覚めてしまったのだ。
身体は疲れているが、頭が起きている。
「どうすりゃいいんだよ・・・」
どうもできないことは、わかっている。
言ってみただけだ。
身体に残った残滓が、事実を告げるだけだ。
身体だけの関係だ。
春則は枕が濡れたことに気づいた。
自分が流した涙のせいである。
「・・・まじかよ・・・!」
手で、何度も目を擦った。
泣くなんてありえない。
感情が、表にでるなんて在り得ない。
悔し涙だ。
そう思うことにした。
それから、身体を起こす。
眠れないのに、このままここに居ても仕方ないのだ。
春則はシャワーを浴びた。
それから、自分の服を着る。
初めて、その日のうちに、ホテルを出た。


to be continued...



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