手のひらの熱  ―プロローグ―






世の中に存在する意味ってなに?
俺はどうして、ここにいる?
意味を失くしたら、そのまま消えればいい。
俺一人消えてしまっても、世界の何かが狂うわけじゃない。
昨日と同じ今日が。
今日と同じ明日が。
変化もなく流れていく。
けど、俺は相変わらずここに座る。
俺の希望は暖かな布団で寝られること。
お腹一杯までご飯を食べられること。
それを与えてくれるなら、俺は誰にだってついて行く。
身体を使って働くことが、どれだけ大変なのか?
男に抱かれることがどれだけ屈辱なのか?
ウヅキは世間を知っている。
世間もウヅキを知っている。
そこにウヅキがいれば、誰かが毎日連れてゆく。
身体を開いて、女のように抱かれることに、もう涙は流さない。
それが日常だ。
初めてのあの屈辱を思い出せば、いつだってウヅキは幸福だ。
今まで受けた仕打ちを思えば、どんなことだって耐えられる。
独りでいることは、なんて幸せなことだ。
ウヅキを構う人間はいない。
虐げ押し付ける人間はいない。
何をする術もないウヅキが生きるのは、身体を売るだけが仕事だ。
それが、仕事。
出来ること。
何の対価もなく抱かれることを思えば、それだけで生きられるというのなら。
ウヅキは何度だって身体を投げ出す。
身体はウヅキの使えるたった一つの部品だ。
どうして生きる?
未来に、何が待っている?
ウヅキは毎日違う男に抱かれながら。
違うベッドで眠りながら。
明日を思う。
思っても明日はくるけれど。
そこに何があるのだろうか。
微かな期待は捨てる。
毎日捨てる。
必要のないものは捨てる。
ウヅキが生きていけるのは、身体以外になにも持っていないから。
何かを欲しいと望まないから。
望んだって、手に入ることはないことくらい、
ウヅキはよく知っていた。
それが、ウヅキの世界だ。


to be continued...

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