試練  8




俺は、ついに言った。
たった三文字の言葉に、なんでこんなに精神力を使うんだろう?
俺の腕の中で、震えていたのに、不意に顔を上げて、
「・・・ほんとに?」
涙目で確認されたもんだから、何度も頷いた。
「したいからじゃ、なくて?」
縋りつくように言われて、俺は首を勢い良く横に振る。
そんなはずはない。
したくないと言えば嘘だけど、思うだけで、気持ちが熱くなるのだ。
ここでしなくても、俺のものだって、確認できるだけで、それだけで、充分な幸せだ。
俺がたどたどしく、自分の気持ちを言うと、今までにないくらい、綺麗に笑った。
そこに涙は見えない。
「・・・嬉しい」
細い腕が、俺の身体に回る。
うわ、やばい!!
続き、してもいいのかな・・・
俺の考えを読んだのか、もう一度、顔を上げて、
「じゃぁ・・・一緒に寝て?」
いいのか?
このまま?
確認しようとしたら、悪魔のような笑顔で、
「今日は何もしないで、一緒に居て?」
えっ・・・・・
固まった俺に、擦り寄って、
「ホントは、少し怖かったんだ・・・」
そんなことを、そんな甘えた声で言わないでくれ!!
本当は、壊しそうなくらい抱きしめたいのに、俺の手はその小さな背中で固まってしまった。
頼むから!
警戒しろ!
そんな顔で言われたら何も出来ないと思って、笑うけれど、安心してるのも今のうちだからな!

  ・・・・・・・多分。


fin



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