媚薬効果 <後編> 砕に理性が残っていたのは最初だけだった。 仰向けにされたとき、天井が鏡だったことがとてつもなく恥ずかしかったことを覚えていた。 「ああぁぁぁっ!」 悲鳴のような声が響く。 片膝を立てて、その奥にみずきの指が潜り込む。 少し前に垂らしたオイルのせいで指はスムーズに埋まる。 引っかかることもなくぬるりとした感触で掻き回すようにされ、砕はいやいやと首を振り、知らず腰が浮いた。 「あ、あぁっ、やぁ・・・っ」 薄い胸の上に手を這わせて、すでに硬く尖った突起に舌を絡める。 「や、あ・・・っ」 逃れるはずもなく、砕は身体中に響いたそれに耐えるようにシーツをきつく握りしめた。 あまり使わないそこはきつかったが、薬のせいもあるのか解れるのも早かった。 みずきの指が二本になっても素直に受け入れる。 「ああぁっ、そ、こ・・・っあぁぁっ!」 思わず身を硬くしてしまう砕の箇所を、執拗に指で探り続ける。 砕は閉じていた目を開けると、すでに潤んでまともに相手が見れない。 それでもじっと見上げた。 瞬きをする度に溢れる涙をそのままに、みずきを探す。 「や・・・、あっ、も、おね、が・・・っ」 開放して欲しいのだ。 砕の中心は今にも弾けそうに震えている。 みずきは弄んでいた胸のそれから唇を離し、身体を沿って下に降りていった。 躊躇うことなく、砕の立ち上がったそれを口に含む。 「ああぁ・・・っ!」 舌を絡めて、何度か扱いただけで砕は堪えきれずみずきにされるままに達してしまった。 ごくり、とみずきの喉が嚥下する。 嘗め取るようにされても、砕の意識はそこにはない。 それよりも信じられないように自分の身体を確かめる。 「あ・・・っ、う、そ・・・っ」 みずきは濡れた唇を嘗めて、震える砕を覗き込む。 「・・・なにが?」 「・・・っお、さまんない・・・っど、しよ、も・・・っ熱い・・・!」 縋りつかれて、みずきはまた舌打ちを隠さない。 治まらないのはみずきも同じである。 この状況で抑えていられるはずがない。 みずきは砕が思うほど淡白なわけではない。 ただ、いつも理性を総動員させて落ち着いてみせているだけだ。 つまり、見栄を張っているだけだ。 それだけだ。 だからここまで煽られて落ち着いていられるはずがない。 「これから、だろ・・・気が済むまで付き合ってやるよ」 みずきは額に汗を浮かべながらも薄く笑った。 砕はもう何度達してしまったのか覚えてはいない。 ただ、絶えず襲う内側からの熱をどうにかしたくて、放ってしまいたくてみずきを求める。 「あぁっあ、あぁっ! や、あぁ・・・っ」 みずきの上で腰を跨ぎ、自ら腰を浮かせて抽挿を繰り返す。 後ろで一つに纏めていた髪が解けて、汗で濡れた身体に張り付いていた。 みずきに被さるように縋り付いて、ただ砕は己の欲望を満たす。 「や、も・・・っああぁっ、これ、も、やぁ・・・っと、まんな・・・っ」 どこかで残っている意識が自分の行動を諌める。 しかし止めることなど出来るはずはない。 「すげぇ・・・エロい・・・」 吐息のようなみずきの呟きに、砕は潤んだ瞳で見上げて、 「も・・・っあぁぁ・・・っだめ、も、い、く・・・っ」 「一人でイクなよ・・・お前」 みずきは笑みを浮かべてその張り詰めた砕を握りこんだ。 「ひぁああっ!」 根元から止められて、絶頂の寸前だった砕は背筋が冷たくなるほど身体を震わせる。 「や、や・・・っはな、して・・・ぇっも、い、きたい・・・っいか、せてよぉ・・・・っ」 「まだだってんだろ・・・しかし、あの薬すげぇ続くな・・・」 「いやっ、や、だぁ・・・っみ、みず、き・・・っお、ねが、い・・・って、はな、し、て・・・っ」 「仕方ねぇな・・・」 みずきは甘いよな、と思いながらも緩めた手でそれを軽く扱いた。 「あっあぁっ、ああぁ・・・っ」 砕は抑えられない腰を揺らして、何度目かの吐精を果たした。 そのままぐったりとした身体をみずきの上に乗せて、呼吸を落ち着けようとする。 しかしそれで治まらないのはみずきだ。 「おい、一人で終わるなよ、俺のコレは玩具かよ・・・」 みずきは砕を乗せたまま身体を起こした。 そのまま砕の背中を支えて反転する。 「あ・・・っ」 みずきは砕の足を抱えて、 「俺の番な・・・」 言って大きく突き上げた。 「ああぁ・・・っ」 ぐったりとしていた砕は急な快感が再び身体中を襲い、ただ、もうみずきにしがみ付いているしか出来なかった。 外はすでに闇に包まれている。 「・・・いつまでそうしているんだ?」 みずきは汚れたベッドの中に潜り込んだままの砕に呟いた。 一度は完全に意識を飛ばした砕は、目を覚ますと理性が戻り羞恥に全身を染めた。 「帰らねぇのか、泊まっていくのか?」 淡々と言葉を吐くみずきに、砕はどうしようもない怒りが込み上げる。 「・・・っあんな、あんなの・・・っ」 「なんだよ、あんなのって・・・欲しがったのはお前だろ」 「・・・・っ」 事実である。 しかし、砕が望んだのではない。 薬のせいだった 。しかしみずきは口調を変えず、 「お前のせいだろ、お前が、飲んだんだ」 正論を吐かれて、砕は声が出ない。 それでも乱れた自分を思い返すだけでどうしようもない羞恥が襲い、みずきが見れない。 そして、引っかかった気持ちが気になって布団の中で躊躇する。 みずきはその変化を確実に読み取って、 「・・・・砕?」 ベッドに座りその布団を剥いだ。 すんなりと姿を見せた砕は赤らめた顔で視線を外す。 「どうした・・・?」 「あ・・・」 砕は身体を起こして、視線を合わせないように俯いた。 それを覗き込まれて、戸惑いながらも口を開く。 「あ、あの・・・い、いや、じゃ、ない・・・?」 「・・・・・は?」 その意味が理解できず、みずきは眉間に皺を寄せた。 砕は赤い顔で視線を漂わせたまま、 「あ・・・だ、って・・・その、俺、ちょっと・・・やりすぎた、かなって・・・あ、あんなに、感じるとは、思わなかった、し・・・みずき、引いたり・・・しない?」 「・・・・・・」 みずきは答えれなかった。 そのみずきに、砕は気になって視線を上げる。 そこでやっとみずきは動き始めたように大きくため息を吐く。 「お前な・・・・!」 疲れた声で、しっかりと睨まれて砕は身体を固める。 「・・・はい」 「何回俺を煽ったら気がすむんだ?」 「・・・・え?」 「いい加減にしろよ、くそ・・・っ」 悪態をつきながら、みずきは顔を顰める。 戸惑った砕をそのまままたベッドに押し倒した。 「み、ずき・・・?」 「泊まり決定、笙子さんに連絡しとけ」 「・・・はい? え? な、なんで・・・っ?」 「なんでもくそもねぇ、お前がそんなこと言うから・・・我慢できねぇ」 「えっえっ、で、も・・・」 「嫌なのか?」 「・・・・や、じゃ、ない、けど・・・・」 「けど?」 「・・・・あの、だって、さっき、いっぱい・・・・」 「それを煽ったのはお前だろ、それにすでに腰立たねぇくせに、帰るもなにもねぇよな」 「・・・・・っ」 砕は真っ赤な顔でみずきを睨みあげた。 事実だったからだ。 それしか、出来なかった。 「それで、どうする?」 いきなりの問いかけに、砕は首を傾げた。 みずきは楽しそうに笑って、 「薬、本物だったって、あいつらに教えてやるのか?」 「・・・・っ!」 答えれるはずもない質問に、砕はただ睨みあげることしか出来ないでいた。 |
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