お願い、サヨナラと言って  10






颯太は笑った。
顔には不自然なほど化粧を施しているので、滑稽な笑顔がそこにあるはずだ。
相手が同じ言葉を返して出て行ってくれるのを望んだ。
それを、ずっと待っていたのだ。
そのために、今までここにいたのかもしれない。
相手をじっと見つめて、自分の言葉を繰り返すのを待った。
そして、もう二度と来ないで欲しい。
姿を見せないで欲しい。
声を聞かせないで欲しい。
笑顔を向けないで欲しい。
振り切ったはずの想いが、傷付いたままの心が、泣き出してしまう。
哀れで崩れ落ちてしまう。
颯太は誰かに願った。
お願い。
笑顔が続くうちに。
姿を消して欲しい。
二度と、逢わないでいて欲しい。
サヨナラと言って欲しい。
永遠の別れだとしても、構わなかった。
気持ちを決めて待っていた颯太に、相手はゆっくりとスツールから降りて立ち上がった。
真っ直ぐに颯太を見つめて、その揺らぎのない目に颯太はどうしようもなく苦しくなる。
視線を逸らしてしまいたい。
この世界が今、終わってしまえばいいのに。
颯太がそう思ったとき、ようやく相手の口が開いた。
「・・・楓子が死んだのは、俺のせいだ」
「・・・・・なに?」


to be continued...

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