言葉にできるはずもなく





そんな決定聞いてない。
さっき身体を重ねたときも、いつもの様に言葉少なな態度も、そんな素振りは全く見せなかった。
やってることは変わってないよな、俺たち。
ホテルの密室がお互いの部屋に移動しただけ。
俺はやっぱりベッドの上で、瞼が落ちそうになるのを堪えて、お前が服を着るのを見てる。
煙草を掴む指の動きすら覚えてしまうほどに。
欲しいと思っているのは俺だけだった?
変わらず焦がれているのは俺だけだった?
何を考えているのか判らないポーカーフェイス。
その下にもう、俺のことは入っていないのか?
それを俺に、どう言えというんだ?
何と言えば正解が貰えて、その後俺はどうなるんだ?
だから俺は口を噤む。
何も言えなくなる。
答えたくないから曖昧にしておく。
知りたくない未来は知らないままでいい。
傷つくのはもう少し先でいい。
もう、決定なんだな。
覆ることはないんだな。
泣いて縋ることも出来ない。怒って振り切ることも出来ない。
いい大人すぎる俺たちに、やっぱり未来はなかったのか?
そんなものがあると思っていた自分に嗤ってしまう。
いい大人なんだから。
子供じゃないんだから。
笑って受け入れるさ。
涙は出さないと決めた。
後姿を見て、縋りつかないと決めた。
出て行く姿に、声をかけないと決めた。
結局俺たちの恋愛って、密室の中だけだったんだな。
今さらか。
ああ、ドアが閉まる。
俺はここから動けずにいるのに。
やっぱり、泣けないな。



こんな俺を、やっぱり弱いと思うか?


to be continued...



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