愛してなんていないくせに 4
俺はヨクボウのハケグチだ。 誰のでも受け入れるから誰もが俺に吐いていく。 そのお礼に、と時計を貰った。 ブランドらしい。シンプルだけど、キレイだ。 くれた相手も身なりのいいスーツの似合う男で、眼鏡の奥の目がとてもカタチ良い。 見ていても嫌悪感を覚えない。愛想笑いで誤魔化さないでいいなんて、キチョウだよな? 身体を綺麗にしてもらって、新しい服まで買ってもらって、新しい時計を付けて。 ご機嫌な俺はキレイな俺を見せたくて今日も仕事で傅く男に会いに行く。 「・・・・・なんだ、それは」 キレイな俺に対する第一声。 しかも、売り物の顔を険しく顰めて。 それって反応違うんじゃねぇの? 「キレイだろ?」 「どれが?」 そう返ってくるとは思わなかった。 どれ? 俺? 自己満足かな、と自分を見返すと勢いよく手を引かれてベッドに投げ出された。 心地良いベッドはスプリングが柔らかくて俺が沈む。 その上から圧し掛かられて、 「ん? もうするのか? せっかくキレイなのに・・・」 崩すのかよ? 俺のタワゴトは無視された。 大きな口で塞がれて、硬い舌が入って俺を奪ってゆく。 「ん、ん・・・」 性急に求めるように、ネクタイが解かれてシャツの裾から手が滑り込んでくる。 冷たい。大きな手。 これって、怒ってるのか? でも、抱き方はいつもこんなもん。 俺に判別なんて無理。 怒ってるのか? どうして? 俺がキレイだから? 他の男に染まってるから? 腕の時計を気に入っているから? ――――――俺が、他の男に抱かれているから? |
fin