愛してなんていないくせに  1





「シマウマの縞々、顔は縦縞って知ってたか?」
俺の質問に、眉を顰めて振り返った。
ベッドにひっくり返った俺は天井を見上げていた視線を、男に向けた。
Tシャツの裾に手をかけ、勢い良く脱ごうとしていた手を止めて、俺と視線を合わせるその目は、いぶかしんでいた。
「何を言っているんだ」という視線ではない。
「また何を言い出したんだ」という視線だ。
「シマウマ。俺一度も本物見たことないんだよなぁ・・・だから、信じられない。お前は? 見たことある?」
ベッドに近寄って、俺を見下ろす視線は冷たい。
「ある。でも、細部まで覚えていない。小学校の頃だから」
「なんだよおもんねぇなー・・・それじゃ本当かどうか、益々判んねぇよな」
「それがどうした?」
男の冷たい視線を笑って受けた。
「もう、やらない。帰って?」
笑って言ってやったのに、冷たい視線は変わらなかった。
俺の傍に座って、鼻先を身体に寄せる。
「・・・違う奴には、抱かれていたようだが?」
「うん、ちょっと前にね・・・そんなに匂い残ってる?」
「品の無い香水の匂いが」
「あ、香水。確かに、すげぇしてた・・・瓶、頭から被ったってくらい」
他人の匂いに敏感な鼻を持つ男の顔を両手で挟んで、
「シャワー浴びてねぇの、だからあっちの匂いかと思った」
笑ってやった。
男の眉は一筋も動かない。
ただ、冷たい視線がぶつかるだけだ。
その口が開くのを、ゆっくり見た。
「・・・理由は何だ?」
したくない、理由か?
俺は少し考えて、笑った。
「気分?」
だって、そうゆう気分のとき、あるだろ?
男の言葉は一言だった。
「却下」
俺の手を一つにまとめて、俺の頭の上でベッドに押さえつける。
簡単に片手で押さえられたけど、抵抗を見せるわけじゃない。
男が上手なのは判ってる。
今日も、キモチヨクさせてくれるだろう。

しまった。

もう二度としたくないって言ったほうが、良かったか?
しかし始められては、俺には止められない。
俺の身体は、セックスには従順だ。
今日も、きっと明日も誰かに抱かれているだろう。
別にいいさ。
眠れるまで、抱いてくれ。


to be continued...



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