拍手9 これは未練か躊躇いか これは試練か幸いかシリーズ 1 新は実はとっても格好いいんだと思う。 ええと、八人中五人はそう言うと思う。 え? 微妙? いいんだよ。あんまり格好良いって言い過ぎると、 みんなそう思っちゃうじゃん。 新はだって、僕のだし。 なんでか解からないけど、こんな僕のだし。 じぃ、と新を見つめると、新は男らしい顔をしているのにそれを 慌てさせて視線を彷徨わせて、それからきっと、自分が何をしたのか 考えているところなんだろうなーって解かる顔をして、 「え・・・っち、チナ、なに・・・?」 なんで、そんなにオドオドしてるの?! 僕よりずっと大きくて、ずっと力もあるくせしてさ。 むしろ僕のこと、厭になったのかなって・・・思うじゃん? 2 顔は整っているし、男らしいって、男なら誰もが憧れるような格好良い身体だし。 性格は優しいし、行動は真面目だし、それに笑顔がとっても――可愛いんだ。 なのに僕の前だけ、そんなオドオドしていつも僕の何かを窺ってる。 力じゃ絶対に敵わないし、別に物に当たったこともないのに。 僕のこと好きって言っても、それじゃ、僕が言わせてるみたいだし。 全然、オモシロクナイ。 とっても、ツマンナイ。 たまに、本当にたまに、怒ったりすると・・・すんごく格好良いんだけどなぁ。 僕は溜息を吐いて、自分のへこんだお腹を撫でた。 「チナ・・・?」 「子供が出来ちゃった」 「・・・・・・・ッ」 わーすごい。 棒を飲み込んだような顔って、こういうのを言うのかな。 3 「だって新ってば、いっつも僕の中にあんなに出すんだもん」 「ち・・・っちちち、ちっ!!」 「新、パパになる?」 「ちちちち!」 「ちちちってなに? どっか怪我でもしてるの? 血が出た?」 「チナッ!!」 珍しく、大きな声を出した新に僕は新鮮で嬉しくなった。 「なぁに?」 「・・・・あの、・・・その!」 だからなんで、そこで勢いがなくなっちゃうのかなぁ? なんで僕の顔、見ないのかなぁ? 4 黙っていれば、絶対良い男なんだけど。 僕もよく、みんなに紹介してって言われるんだけど。 優柔不断で、弱気で、情けなくて、一人じゃなんにも 出来ないヤツだって、言ってやるんだ。 新のイイトコなんて、僕だけが知ってればいいんだから。 これ以上ライバルは要らないし。 要らないよね、新・・・? 「ち、チナは、だ・・・だって、男・・・だろ?」 「そうだよ? いっつも僕を抱いてるの、新なのに。女の子に見えた?」 「だ・・・だ、から、だ、って、あの、じゃ、・・・な、なん、で、」 ああもう! どうしてそこですぐに突っ込まないの?! 男がニンシンするはずないじゃん馬鹿! 5 「お腹、おっきくなったらどうしよう? エッチできなくなっちゃうね」 「ち、チナ・・・ッ!!」 「いや? それでもエッチする? 出来るのかなぁ? 子供どうにかなっちゃわないかなぁ?」 「いや、それは安定期を過ぎれば・・・」 カッチーン。 なにそれ! 今、ポイントマイナス95です! なんでそんなこと知ってんの、新?! 「ふぅん、そうなんだー。新物知りだね、誰と子供作っちゃったの?」 「・・・・ッ!! ッッ!!!」 すごい勢いで首を振ってるけど、その慌てようって、何? てゆうかさ、言い訳くらい、言葉で言ってよ。 マイナス3です。 新ピンチ。 あとマイナス2で今日は出てってね!! 6 「新の子供かー可愛いだろうなー男の子かなぁ、女の子かなぁ? どっちが欲しい、新?」 「あ・・・あぅ、う・・・っ」 新、格好良い顔が台無しなんですけど。 動揺して真っ赤になっちゃって慌てて真っ青になっちゃって。 「あ、てゆーか、その誰かとの間にはどっちが出来たの?」 新の子供・・・本当に、可愛いだろうな。 新って、これでいて器用だから・・・いいパパになるんだろうな。 あ・・・どうしよう。 なんか悲しくなってきた。 やばいぞ。 「・・・ごめんね、僕、子供産めなくって!」 泣きそう。 拗ねてるって自分でも思うけど、なんか悔しくって仕方がない。 新の馬鹿。新の馬鹿。 馬鹿! 「俺の子供は、チナしか産めない!」 7 び、びっくり・・・新がはっきり言うなんて、久しぶり。 てゆうかさ、それ・・・おかしいよ? 僕、産めないから、子供。 生物学的に。 うう、でも、なんか・・・すんごく嬉しいって思う僕もどうなの。 プラス50。 新、ちょっとカッコイイ。 すっごく真剣な顔で僕を見てるのって、すごく格好良い。 「他の誰かなんかに出来ない! 子供はチナにしか出来ない・・・!」 言ってることは、どーしようもなく馬鹿みたいなんだけどね。 馬鹿な新には、馬鹿な僕が丁度いいのかな。 良いよね? 馬鹿同士、ずっと一緒に居てくれるよね? 8 「新・・・怒った? 僕、嫌いになる? こんな僕、厭かなぁ・・・」 「な・・・っならない! 怒ってない! 可愛い! チナが一番可愛い!」 ここでそんなにも力いっぱい断言されても・・・やっぱり新、どっか変かも? でもさ、それがすっごく・・・嬉しいんだよね、僕も。 「新、好き」 「・・・・・ッ!!」 たったこれだけで、真っ赤になっちゃうのも、好きだよ。 不言実行っていうのも、格好良いけどさ。 ここで、自分も好きって言ってくれたら・・・もっと良いのにな。 なんてさ、そんなの、無理だよね、新には。 「ねぇ、あら・・・」 「お、俺も、好きだ」 「・・・・・・・」 「チナが、誰よりも、誰よりも、好きだ」 9 や・・・・・ヤバイです! 顔が赤いです! これは不意打ちだよ! どうしちゃったの新!! ポイントプラス200です。 振り切っちゃってます。 ええとええと、こういうときは・・・、どうしよう?! 「新、」 僕は少し息を飲んで、 「・・・・・子供、作る?」 そっと訊いた。 新が喉を鳴らしたのが、聞こえた。 いつもぱちはちありがとうございます!励みになります! |
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