拍手9 これは未練か躊躇いか これは試練か幸いかシリーズ




新は実はとっても格好いいんだと思う。
ええと、八人中五人はそう言うと思う。
え? 微妙?
いいんだよ。あんまり格好良いって言い過ぎると、
みんなそう思っちゃうじゃん。
新はだって、僕のだし。
なんでか解からないけど、こんな僕のだし。
じぃ、と新を見つめると、新は男らしい顔をしているのにそれを
慌てさせて視線を彷徨わせて、それからきっと、自分が何をしたのか
考えているところなんだろうなーって解かる顔をして、
「え・・・っち、チナ、なに・・・?」
なんで、そんなにオドオドしてるの?!
僕よりずっと大きくて、ずっと力もあるくせしてさ。
むしろ僕のこと、厭になったのかなって・・・思うじゃん?



顔は整っているし、男らしいって、男なら誰もが憧れるような格好良い身体だし。
性格は優しいし、行動は真面目だし、それに笑顔がとっても――可愛いんだ。
なのに僕の前だけ、そんなオドオドしていつも僕の何かを窺ってる。
力じゃ絶対に敵わないし、別に物に当たったこともないのに。
僕のこと好きって言っても、それじゃ、僕が言わせてるみたいだし。
全然、オモシロクナイ。
とっても、ツマンナイ。
たまに、本当にたまに、怒ったりすると・・・すんごく格好良いんだけどなぁ。
僕は溜息を吐いて、自分のへこんだお腹を撫でた。
「チナ・・・?」
「子供が出来ちゃった」
「・・・・・・・ッ」
わーすごい。
棒を飲み込んだような顔って、こういうのを言うのかな。



「だって新ってば、いっつも僕の中にあんなに出すんだもん」
「ち・・・っちちち、ちっ!!」
「新、パパになる?」
「ちちちち!」
「ちちちってなに? どっか怪我でもしてるの? 血が出た?」
「チナッ!!」
珍しく、大きな声を出した新に僕は新鮮で嬉しくなった。
「なぁに?」
「・・・・あの、・・・その!」
だからなんで、そこで勢いがなくなっちゃうのかなぁ?
なんで僕の顔、見ないのかなぁ?



黙っていれば、絶対良い男なんだけど。
僕もよく、みんなに紹介してって言われるんだけど。
優柔不断で、弱気で、情けなくて、一人じゃなんにも
出来ないヤツだって、言ってやるんだ。
新のイイトコなんて、僕だけが知ってればいいんだから。
これ以上ライバルは要らないし。
要らないよね、新・・・?
「ち、チナは、だ・・・だって、男・・・だろ?」
「そうだよ? いっつも僕を抱いてるの、新なのに。女の子に見えた?」
「だ・・・だ、から、だ、って、あの、じゃ、・・・な、なん、で、」
ああもう!
どうしてそこですぐに突っ込まないの?!
男がニンシンするはずないじゃん馬鹿!



「お腹、おっきくなったらどうしよう? エッチできなくなっちゃうね」
「ち、チナ・・・ッ!!」
「いや? それでもエッチする? 出来るのかなぁ? 
子供どうにかなっちゃわないかなぁ?」
「いや、それは安定期を過ぎれば・・・」
カッチーン。
なにそれ!
今、ポイントマイナス95です!
なんでそんなこと知ってんの、新?!
「ふぅん、そうなんだー。新物知りだね、誰と子供作っちゃったの?」
「・・・・ッ!! ッッ!!!」
すごい勢いで首を振ってるけど、その慌てようって、何?
てゆうかさ、言い訳くらい、言葉で言ってよ。
マイナス3です。
新ピンチ。
あとマイナス2で今日は出てってね!!



「新の子供かー可愛いだろうなー男の子かなぁ、女の子かなぁ?
 どっちが欲しい、新?」
「あ・・・あぅ、う・・・っ」
新、格好良い顔が台無しなんですけど。
動揺して真っ赤になっちゃって慌てて真っ青になっちゃって。
「あ、てゆーか、その誰かとの間にはどっちが出来たの?」
新の子供・・・本当に、可愛いだろうな。
新って、これでいて器用だから・・・いいパパになるんだろうな。
あ・・・どうしよう。
なんか悲しくなってきた。
やばいぞ。
「・・・ごめんね、僕、子供産めなくって!」
泣きそう。
拗ねてるって自分でも思うけど、なんか悔しくって仕方がない。
新の馬鹿。新の馬鹿。
馬鹿!
「俺の子供は、チナしか産めない!」



び、びっくり・・・新がはっきり言うなんて、久しぶり。
てゆうかさ、それ・・・おかしいよ?
僕、産めないから、子供。
生物学的に。
うう、でも、なんか・・・すんごく嬉しいって思う僕もどうなの。
プラス50。
新、ちょっとカッコイイ。
すっごく真剣な顔で僕を見てるのって、すごく格好良い。
「他の誰かなんかに出来ない! 子供はチナにしか出来ない・・・!」
言ってることは、どーしようもなく馬鹿みたいなんだけどね。
馬鹿な新には、馬鹿な僕が丁度いいのかな。
良いよね?
馬鹿同士、ずっと一緒に居てくれるよね?



「新・・・怒った? 僕、嫌いになる? こんな僕、厭かなぁ・・・」
「な・・・っならない! 怒ってない! 可愛い! チナが一番可愛い!」
ここでそんなにも力いっぱい断言されても・・・やっぱり新、どっか変かも?
でもさ、それがすっごく・・・嬉しいんだよね、僕も。
「新、好き」
「・・・・・ッ!!」
たったこれだけで、真っ赤になっちゃうのも、好きだよ。
不言実行っていうのも、格好良いけどさ。
ここで、自分も好きって言ってくれたら・・・もっと良いのにな。
なんてさ、そんなの、無理だよね、新には。
「ねぇ、あら・・・」
「お、俺も、好きだ」
「・・・・・・・」
「チナが、誰よりも、誰よりも、好きだ」



や・・・・・ヤバイです!
顔が赤いです!
これは不意打ちだよ!
どうしちゃったの新!!
ポイントプラス200です。
振り切っちゃってます。
ええとええと、こういうときは・・・、どうしよう?!
「新、」
僕は少し息を飲んで、
「・・・・・子供、作る?」
そっと訊いた。

新が喉を鳴らしたのが、聞こえた。


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fin



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