拍手33 お礼の代償 下僕王子シリーズ 「ん、さんきゅ」 DVDを見ていた姫也にマグカップに入れたたっぷりのカフェオレを差し出すと、視線も合わせず手を伸ばしてカップだけが取られた。 別に構わないのだけど、と央二は少し溜息を吐く。 この女王様のこの態度は今に始まったことじゃないし、それを増長させたのも央二なのだ。 それでも、視線が欲しい、と画面に夢中な横顔を見つめると、 「・・・なんだよ?」 くっきりとした大きな目を顰めて、姫也が振り向く。 「・・・なんでもないよ・・・?」 「それがなんでもねぇって顔かよ」 いつもの通りに微笑んだはずなのに、最近姫也は同じ表情でも央二の気持ちに敏感だ。 それを嬉しくも感じ、あまり気付かれたくはないな、と困っていることでもある。 姫也は湯気の上がるカップを置いて、左手を握りこみ右手の指だけでちょいちょい、と央二を呼ぶ。 あの手に殴られるのか、と知りながらも、央二は決して逆らわない。 ソファに座る姫也の隣に座ると、胸倉をその手で掴まれた。 痣にならなければいいけど、と央二は覚悟して目を閉じると、ぐい、と引き寄せられ拳ではなく額に暖かなものを感じた。 「――ん!」 「・・・・・・」 驚いて目を開くと、央二を掴んだ姫也が離れていくところだった。 まだそこへ温もりが残る額に触れ、いったいなにがここに当たったのかを考え理解する。 「・・・・姫也、」 「なんだよ、文句あんのか?」 驚いたまま呼べば、少し頬を染めた姫也が照れを隠すように睨んでいる。 央二は一気に気持ちが沸騰するのが解かった。 その感情に逆らわず、大きなソファに姫也を押し倒しその顔へキスを落とす。 「んっ! や、なにっ?! ばか、央二っやめ・・・っ」 「姫也・・・」 一度ずつ音を立てて、キスの雨を顔中に降らせた。 央二を押し上げて止めようとする抵抗など、意味はない。 「ん―――・・・っ」 最後に、その唇を塞ぎ奪った。 内側を誘うように何度も口づけて、やはり音を立てて離した。 ソファに倒れこんだ姫也は、真っ赤な顔で驚きながら怒っていた。 その色は、怒りのものと羞恥のものだ、と解かるから央二は蕩けるように微笑み返す。 「こ・・・っの! 莫迦央二!!」 「姫也・・・好きだよ、」 「クソ央二! エロばか! ヘンタイ!」 次々に罵られながらも、央二はその声が心地良い、と身体を重ねた。 誘ったのは姫也だよ、と言うのは、さらに怒られそうだったのでとりあえず言わないでおくことにした。 いつもぱちはちありがとうございます!励みになります! |
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