おまけ4 ―出来るとか、出来ないとか―
「す・・・すみません・・・」 果てしなく落ち込み、何よりも申し訳ない、と頭を下げ細い身体をもっと小さく縮めた。 本当に、 なんで、 どうして、 と誰に訊かれずとも自分で悩み考え苦しんでしまうのは相地だ。 ベッドの隅に小さくなるのに、その謝罪を受け止める本間はカラリと笑って、 「気にすんなよ」 「でも・・・すみません・・・」 最早それしか出てこない声に、上半身だけ未だ裸のままの本間は苦笑して、 「んなに謝ることじゃないだろ? 当然のことでもあるんだから、気にすんなって」 「で、でも・・・でも、」 謝罪以外の何かを探そうとする相地に、 「あのさ、こういうこともあるし、ここまで来て俺もそう急かさねぇし。女だって初めてはキツいって」 「・・・・・・」 ゲイだと言う本間の言葉に、いったいどこで女と試したのだ、と相地の視線が一瞬険しくなって刺さる。 それから視線を逸らし、 「一般論だけど・・・・・いやマジで、そんな気にすることじゃねぇって。むしろ、んなに謝られるほうが傷付く」 「でも・・・・・でも、森澤は、」 「森澤? 弟のほうか?」 「・・・・・・」 言いかけて、相地はそれがどんなことなのかを思い出し真っ赤になる顔を伏せた。 だから一層、この状況が自分で許せない、とも思う。 本間から想いを告げられ、自分の気持ちを固めて答え、いざ先に進もう、と本間の重みを受け止めたベッドの上で、相地は小さくなるばかりだ。 出来なかったのだ。 痛くてどうしようもなくて、いくら宥められても涙は溢れるだけで、相地は無理だ、と泣きじゃくってしまった。 嫌なはずもないのだけれど、いろんな感情が混ざって自分自身でもどうしようもなくなってしまった。 本間はそれにすぐに手を引いて、もう何もしない、と抱きしめてくれた。 相地に知識がないわけでもなく、友人の森澤が男と付き合っているのも知っているし、最初がどんな状況でしてしまったのかもつい聞いてしまった。 そんなことでできるのなら、と自分も簡単に構えていたのだが、どうしたって身体は受け入れるようにはならない。 激しく落ち込んだ身体を、いつの間にか本間が腕に抱きいれてくれた。 「だーいじょうぶだって、ゆっくり、慣らしてけばそのうち出来るって、な?」 「・・・・・できなかったら、どうするんですか・・・」 明るい声で言ったのに、どこまでも暗い声で返されて、本間は堪えきれず笑ってしまう。 「先輩!」 「や、だってさ、お前もしたいって思ってくれてるってことだろ?」 「う・・・っ」 「漸く、ここまで来たんだからこの先なんてすぐだろ」 「す・・・っすぐ、すぐって・・・!」 「それに、コレに時間かけるのは、俺としても楽しいし嬉しいからないくらでもゆっくりしようぜ」 「先輩・・・!」 ぎゅう、と抱きしめてくる腕から逃れようと、相地は恥ずかしさも込めて本間を押し返すけれど、体格の差からも叶うはずもない。 真っ赤になる相地に、本間は少し悪戯心を覚えて、 「どうしても気になるんなら、他のこと覚えるか?」 「はい・・・?」 挿入しなければ終わらないことではない、と本間はさらりと口にする。 意味が解からない、と真っ直ぐに見つめてくる顔を覗き込み、指でその口をなぞった。 「まずはこっちで・・・覚えてくれても、いいけど?」 「―――――先輩ッ!!」 何をしたいのか、同じ男の身体で相地も解からないはずもない。 「あ、それとも、一緒にするか?」 「わ――――ッ!」 思考だけはしっかりと働くらしく、真っ赤になる相地に本間は嬉しそうに腕の中の身体を抱きしめた。 「さ、さい、サイテイっす、先輩・・・!!」 「フツーでしょ」 逃げられない相地は、泣き混じりの声で罵るのに、それはまったく本間には届いていないようだった。 どうしてこんな人が、俺なんだろう。 どうしてこんな人が、俺はいいんだろう。 相地はそれを考え続け、きっと一生かかっても答えなんか出ない、と自分より広い胸に気持ちと同じように顔を押し付けた。 |
fin