☆ 同期生企画「広げよう、BL小説の輪」 


こちらは、2006年10月に楽天ブログ開設一年になる同期生、月代おるはさま・架月真名さまとチャレンジした企画です。
「たくさんの方に自作の小説を読んで欲しい!同じようにBL小説を書いている方と交流したい!」
という主旨の元、 「水の中でえっち」 「3P」 「主従関係」 をキーワードに、同じ日に同テーマで一斉にブログに小説をUPしてもらう企画でした。




シュリ  3  ―同期生企画2006―  




冬の長いこの国でも、夏の季節を迎えた。
「あーつーいーよー」
南国に比べればはるかに気温は穏やかとはいえ、暑いものは暑い。
シュリは勝手知ったる丘の上の城で、ショートパンツ一枚の格好で転がっていた。
空調完備がされている屋内とはいえ、炎天下の外から入ってきたときは身体が火照っていてどうしようもない。
「シュリ」
その格好を見て苦笑したような顔になったシェリーは、その手を取って城の奥へと誘った。
城内は広い。
冬から夏にかけて、シュリはここに入り浸るようになったけれど未だ全てを見たことはない。
通された部屋は奥のテラスに繋がる一室で、天井が外からの光を取り込むドームのようになっていた。
今も夏の日差しを受けて明るい。
しかしシュリが見て驚いたのはそこではなく、部屋の中央に設置された広い水辺だった。
「うわ・・・! これなに?」
充分に泳げるほどの広さをもつそこはプールのように見えて、しかしシュリはその実物を見たことがなかった。
冬の長いこの国ではあまり必要のないものだったからだ。
その横には休める長椅子とハンモック、木目のテーブルの上にはジュースとフルーツ。
目を輝かせてシェリーを振り向くと、そこにはあまり言葉を口にしない人形が笑っていて、
「浴室」
とだけ呟く。
「・・・え? ここ? 風呂なの?」
その答えに眉を寄せたシュリはもう一度全体を見渡す。
確かに夜にここに来れば、満面の星空が見えてそれは綺麗かもしれない。
だが、広い。
ただ浴室とだけするなら、呆れるほど広い。
「でも、今日は水を張ってあるから」
隣でどうぞ、とシェリーが言う。
「・・・・プール?」
訊くと、こっくりと頷かれた。
もちろん、喜んで飛び込んだのは言うまでもない。
プールと言ってもシュリの足の付け根辺りまでしか深さはなく、ショートパンツだったシュリは躊躇うことなく暑い日差しを受けて水遊びを楽しんだ。
一人では楽しくないので、もちろんシェリーを付き合わせる。
暫くして休憩しよう、と二人でテーブルへと戻り、シュリは嬉しさのままハンモックへと乗りあがる。
シェリーがタンブラに綺麗な色のジュースを入れてくれて、盛り付けられたフルーツを出してくれる。
それをシュリは笑顔で口に入れながら、ブランコのように座っていた布の上に小さな包みを見つけた。
「なにこれ?」
手にとって、チョコレートのようだ、とシュリは躊躇いなく包装を開いた。
中身はやっぱり小さなそれで、シェリーが何かを言う前にシュリは口にひょい、と投げ入れた。
「シュリ、それは、」
「・・・・ん、」
口に入れてから、シェリーの声を聞き、口の中で溶け始めたそれを飲み込むに飲み込めず、シュリは少し首を傾げて、
「・・・たべりゃだめらっら?」
舌の上にそれを置いたまま言う。
シェリーは珍しく少しの戸惑いを見せて、それでもその状態にまでなってから吐き出せとも言えず、シュリが飲み込むのを待った。
「チョコだったけど、駄目だった?」
確認するシュリに、シェリーは少し首を傾げた。
「駄目じゃない。シュリが食べちゃ駄目なものは、ここにはないけれど」
「ど?」
「即効性がある」
「・・・・・? そっこー?」
シュリも解からず首を傾げる。
けれど、ハンモックに座った身体が、熱さを感じた。
天からの光だけではなく、じっとりと内側から熱い。
「・・・・?」
その熱をどうにかしようと、吐息を吐き出す。けれどそれで終わるはずもない。
「なんか、熱い・・・?」
シュリは辺りを見渡して、どこかにその熱の正体があるように探したが見つかるはずもない。
しかし視界に入ったのはさっきまで遊んでいたプールだ。
水だった。
あの中なら、冷たいはずだ。
シュリは何を考えるでもなく、身体を先に動かした。
「シュリ、」
止めるシェリーの声すら、シュリには入ってこない。
「熱いー」
どぷん、ともう一度水の中に身体を埋める。頭まで潜って、熱を吐き出すように顔を自ら出した。
「あついぃ・・・」
それが身体に纏わりついているかのように水の中で身体を捩り肌を探る。
その情景を見ていたシェリーは表情を変えなかったけれど、人間の男が見れば迷わず手を差し伸べていただろう状態に見えた。
目は熱を含んで潤み、赤い唇から漏れる吐息は熱を感じる。
火照った身体は徐々に色を見せるように染まり腰つきがあまりに淫らに動く。
さすがにこの状態で放って置くわけにも出来ず、シェリーは助けるように手を伸ばしてその中へ入る。
「シュリ、すぐに治まるから」
シュリは差し出された手を掴んで、いやいやと首を振る。
縋るようにシェリーの身体に抱き着いて、
「やー、あつい、なんで、やだぁ・・・っ」
取って、と水の中に座り込んだシュリはシェリーに縋る。
その熱がなんであるのか、シュリが知らないわけでもない。
この幼い身体で、今の同居人と出会うまでは娼婦の仕事をしていたのだ。
それをするな、と言われた日からシュリは一度も誰とも肌を合わせていない。
同居人ですら、ただのそれのままだった。
覚えのある感覚に、どうして、とシュリは戸惑う。
そして理性があっさりと消えた。
自我を保っていられず、駄々っ子のようにシェリーに擦り寄る。
シェリーが助けてくれる、と言うように縋る。
熱を吐き出してしまえばそれで終わるのだろうけれど、今のシュリにそんな手段は思い浮かばない。
ただ戸惑い、助けを求めるだけだ。
「やぁ、ん、んー、あつい、んん・・・っ」
熱いという身体をシェリーに押し付け、触れることの刺激で何かを取るように自分で身体を探った。
「やだぁ、あつい、よぉ、やぁ・・・」
すでにその目には溢れるほどの涙を浮かべてシェリーを見上げる。
シェリーはどうしようか、と取りあえず細い体を受け止めて考えていた。
その浴室にもう一人入って来たのは、その時である。

「・・・・楽しそうな眺めだね」

博士だった。
外は夏だというのに、ドーム内の気温は日差しを受けてかなり高くなっているというのに。
博士の格好はいつも変わらない。
素肌を隠すような長衣で片目のモノクル。
表情は深くまで読めない笑顔だった。
シェリーは泣き出したようなシュリを受け止めながら振り返り、
「博士。シュリが媚薬入りのチョコを食べてしまいました」
以前にここで使用したものが、残っていたらしい。
博士はただ笑って、
「うん、そうにしか見えない」
博士はその二人に近づいてシェリーに縋るシュリを楽しそうに観察した。
「可愛いね、本当にこの子は汚れていない」
「んー・・・やぁ、」
博士が顎を取って顔を上げさせると、その指の動きさえも敏感に反応してシュリはいやだ、と首を振る。
「やだ、あつい、っん、やだよぉ・・・」
何が嫌なのかは伝えることが出来ない拙い声で、ただ泣き出すシュリに博士はプールになった浴槽の縁に座り込みシェリーから引き離すように腕を取った。
「博士」
足は水に浸かっている状態で、その膝の上にシュリを乗せる。
博士が何をしようというのか解かるシェリーは取り合えず主を諌めるような声を出した。
「ブルーが」
ブルーが、シュリの同居人である。
今は保護者のような立場でもある。
今、どんな状況であれ、この先をしてシュリを楽にしてあげるのはブルーの役目だ、とシェリーは思っていた。
けれど博士は口元に笑みを浮かべたままで、
「うん? だって仕方ないだろう・・・? こんなに泣いている」
「けれど、」
「やっん!」
博士は自分の服が濡れるのも気にせず幼い身体を腕に入れた。
肌に触れて、悪戯をするように指先で胸の上に出来た突起を突付く。
シュリは腰を捻りそれから逃れようとするが、身体は博士へと擦り寄るような状態だ。
この熱の処理の方法を、身体は知っている。
自我はなく泣き出してはいるものの、嫌だと言いながらも、シュリはどうにかして欲しい、と望んでいる。
「たまには人間の身体も面白い」
「博士」
「あっああんっ」
「お前なら、ブルーも怒りはしないよ」
「やぁっんん!」
博士は大きな手をシュリの濡れた身体に、ピッタリとくっ付いたショーとパンツへと伸ばした。
その中心で小さく膨らむのをやんわりと揉み込む。
それにビクビクと反応するシュリに、シェリーは頷くしかない。
主に逆らえはしない。
博士の創った、アンドロイドなのである。
幼い身体でいて、綺麗な子供でありながら、シェリーもセックスドールなのだ。
乱れる痴態を知り尽くしている。
抵抗もなく博士の腕の中にいるシュリから、唯一の服を剥がしシェリーは身体を水に沈めた。
座り込まないと、そこに届かないのだ。
博士がシュリの片足を持って上げながら広げる。
「あ、ん、ん・・・っ」
すでに何をされているのかも解からずシュリはただされる行為を受け入れるだけだ。
シェリーが躊躇うことなく、硬くなったシュリのそれを口に含むと激しく歓喜に震えるように反応した。
「ああぁぁっ」
すぐに湿りを帯びるそこへ、シェリーは執拗に舌を這わせた。
仕込まれた全てを曝すように、足の付け根から後ろのほうまで手のひらも使ってシュリを追い上げる。
「あっあぁっん、んー・・・っ」
シュリを抱いた博士がただそれを見るだけで終わることもなく、幼く細い身体を探るように手を這わせた。
「あんっ! ん、やぁあ!」
硬くなった乳首は摘んで、強く引っ張ると細い腰が大きく跳ねる。
シェリーは粘つく唇を舐めながら、
「博士、入れますか?」
指先にそれを絡めた。返ってきた博士の声は楽しそうで、
「うん、きついかもしれないね?」
するな、ということはない。
シェリーは慣れた手で、使われていないと見ただけで解かるシュリの奥へと指を埋める。
「ん、やああぁぁっ」
涙の溢れる悲鳴を上げるけれど、シュリはその勢いで堪えることも出来なかった熱を吐き出した。
「ん・・・っは、」
呼吸の荒いシュリはその目をもう開くこともなく涙を零しながら伏せ、四肢の力を抜いて博士の身体に凭れかかっていた。
シェリーは果てたばかりのそこから博士を見上げて、
「・・・博士、」
この先をどうしようかという視線に、博士はただ笑って、
「これで終われると思うのかい? あの媚薬の効果はお前が一番知っているだろう?」
「・・・はい」
その通りだった。
だからシェリーは素直に頷く。
確認するまでもなく、果てたはずのシュリからもう一度熱い吐息が漏れ始めている。
じゅく、と濡れたそこを咥えながらシェリーはもう一度シュリの深くへ指を埋めた。
「ん・・・っん! んや、あ・・・っ」
嫌悪でない喘ぎが小さな口から零れる。
シェリーが内側を探るようにするのを、シュリはお腹を波打たせるように反応する。
「きついかい?」
笑ったような声に、シェリーは素直に頷いた。
「はい、でも、」
「シェリーのなら、いけるかな?」
「宜しいのですか」
最後にもう一度確認したシェリーに、博士は楽しそうな笑みを崩さなかった。
「この城の中にいるのなら、それは全て私のものだよ」
「・・・・はい」
「シェリー、お前もね」
「はい、博士」
「挿れてあげなさい」
「はい」
博士は膝の上で震えるシュリの足を取って開いて見せた。
シェリーの細い指で慣らした奥まで、良く見える。
シェリーは水の中から身体を起こしてシュリの腰に自分のを擦り合わせるように近づける。
「ん! ん、ぁ、ん・・・っ」
シュリと同じような格好をしていたシェリーもその服を脱ぎ捨てて、あまり人に使用したことのないそれを奥へ埋める。
「あ! あ、あ! や・・・あぁ!」
「ん・・・っ」
シュリにとってみれば、そこへ他人を挿れるのは随分と久しぶりで、慣らしてみても身体が硬くなってしまう。
シェリーに押し込まれて、背後から博士に抱きかかえられて、動けはしないけれど身
体を震わせて硬直させた。
「ん、ん、な、ん・・・っブ、ルー・・・?」
涙を浮かべた瞳が開いて、どこにもいない相手を探すように動いた。
自我はなく、意識も混沌としているけれど、幼い子供であってもシュリは知っている。
自分が、誰を欲しいと思っているのか。
瞬くと流れ落ちる涙は止ることはなく、不安を浮かべる目にシェリーは顔を寄せた。
「んっ、」
舌を伸ばして涙を掬い、振るえる唇に優しく口付けた。
それを見て珍しく、博士が目を瞬く。
面白そうに笑って、
「・・・珍しい、お前からするなんて」
「シュリが、でも」
とても愛おしく、儚く見えたのだ。
博士が手がけたセックスドールの中でもあまり感情を見せないシェリーが自ら唇を奪う。
それだけのことだけれど、シェリー自身も不思議に思うほどだった。
けれど博士は楽しそうなままで、
「仕方ない。この子は、とても可愛い」
「ふ、ああぁっ!」
「ん、ん・・・っ」
膝の上の細い腰を揺らすと、シュリはもちろん繋がったままのシェリーまでもその快感を耐えるように目を細める。
その目で、震えるシュリの向こうにいる博士を見上げた。
「ん?」
片目をモノクルで隠した博士が、いつものようにその表情を和らげた。
そして舌が唇をなぞったのをシェリーは食い入るように見つめる。
「博士」
「シェリー?」
博士の手がシェリーの背中へと伸びて、そのまま下降する。
腰から下へと降りて水に浸かった肌を撫でる。
「んっ・・・」
背中を撓らせるようにして震えると、繋がったままのシュリも小さく啼いた。
双丘の間から奥へと指を伸ばし、そのまま埋めて、
「あ・・・っあ、ん、」
すぐに濡れるのはシェリーがセックスドールだからだ。
内側が濡れたのと同時に、その目が濡れて博士を見上げる。
「欲しいの?」
「・・・はい」
「物足りないんだろう?」
「・・・はい」
受身に慣れたシェリーには、挿入する快楽だけでは終わらない。
小さく震えるシュリを可愛いと思うけれど、博士の言うとおり物足りないのだ。
「シュリはどうする?」
「放ってはおけません」
正直なシェリーの言葉に博士は一層深く微笑んで、
「この状態は難しいね・・・水の中なら平気かな」
シュリがしがみ付いたままのシェリーを少し離し、自らの身体をプールとなった浴槽へ沈ませる。
浮力を利用して反対に向けさせたシェリーを今度は膝へと座らせて、その上にシュリを跨らせる。
「ん、んー・・・っ」
奥へシェリーを埋めたまま水へと入ったシュリがその感覚に震えて、腕を伸ばしてシェリーの背中へと回す。
それを抱きとめながら、シェリーは自分の腰を持った博士の手に期待を込めて震えた。
「あ・・・っあ、」
冷たい水の中でそれをあてがわれて、すでに形を覚えた博士自身が沈んでゆくのをシェリーは腕の
中のシュリを抱きしめて耐えた。
「あ、あ・・・っあぁっ」
「んっやぁっ」
知らず、腰が揺れていたのにシュリが素早く反応する。
「ん・・・っふ、ぅん・・・」
泣きながらただ湧き上がる熱と快感を感じるだけのシュリに博士は笑って、
「シェリー、もっと欲しいとシュリが泣いているよ」
博士を受け入れながらその膝の上で、肩から先を水の上から出していたシェリーの耳元へ口を近づけて囁く。
シェリーは濡れた目でその博士を振り返り、
「ん、は、い・・・んんっ」
頷いたけれど、博士の手が今度はシュリの細い身体を揺らしそれが身体越しに伝わり震える。
「あ、あっやぁ・・・っ」
「あ、ふ・・・っ」
バシャ、と水が跳ねて顔にかかる。
シェリーの上で撓るシュリの手が荒く動いて、シェリーの細い肩に痕をつけるほど強く掴んだ。
「こら。シュリ・・・駄目だよ、力を抜いて」
それを解かせたのは博士の大きな手だ。その手を自分の口まで誘い、シェリーの肩の変わりに力いっぱいに手を握らせたままで口付ける。
「シェリーに傷を付けるのは、お前でも赦さないよ・・・」
「あ、あっあ!」
笑みを含んだその声をしかし、シュリは聴こえてはいないようにただ下から揺らされる腰に反応する。
「博士・・・」
「ん?」
主の意志に従って、食い込んだままの相手と挿れたままの相手を、どちらともに良くなってほしいと細い腰を揺らしてみたけれど、シェリーは吐息のような溜息を漏らして振り返り、
「・・・む、り、です・・・」
ただ主の上で腰を揺らすだけなら何度もしたことはあるけれど、水の中とはいえシュリを抱えたままではシェリーが一番身動きが取れない。
「そう?」
博士はただそれに目を細めシェリーの腰を持って自分を引き抜くように持ち上げて、水の中だというのに音が聴こえるほどの勢いでもう一度埋めた。
「ああぁ・・・っ」
ただそれだけでシェリーはあまり他に聞かせたことのない喘ぎを上げる。
しかしそれを聞くことになってしまっているシュリ自身も快楽に勝てることはなく啼き声を上げる。
「ん、あ、あぁっ、や、あ・・・っあ、つい・・・っ」
「ん、ふ・・・っあ、は、ぁ・・・んっ」
「あつ、い・・・ぃ、あつい、よぉ・・・っんー・・・っ」
「シュリ、簡単にそれは取れないよ・・・どうする?」
水の中で抵抗もなく細い身体を揺らしながら、博士は理性のないシュリに笑った。
「やぁだ・・・ぁ、んあ・・・っ」
子供のように首を振り、シュリはシェリーに腕を回す。
「シュリ、んん・・・っ」
「や、や・・・っも、はや、く・・・っあぁっもぉ、もっと・・・っ」
強請るように、シュリは自ら腰を揺らしてシェリーに縋る。
二人を受け止めているシェリーは積極的になるシュリにますます煽られる。
「しゅ、り・・んっあ、あぁっ」
バシャン、と水が跳ね上がるほど身体を揺らして、
「み、ず・・・んんっ水、あ、つい・・・っ」
「ひぁ、ああぁ・・・っ」
勢い良く下から突き上げるように揺らされて、シェリーはシュリのうわ言のような言葉にその通りだと思いながらも返事すら出来なかった。
その二人を、膝の上で絡まる人形のような二人を眺めて、水に濡れながらもただ博士は笑みを崩さないままだった。



      ***



「これは、どういうことです?」
珍しく、ブルーが視線を強くして後ろにいる博士を振り返った。
その目の前にいるのはベッドに横たわり、規則正しい寝息を立てるシュリである。
それを見てブルーはここまで案内してくれた相手に対し、強い声をかけた。
「見たままですが?」
モノクルを片目にかけたままの博士の笑みはずぶ濡れになりながらも行為を続けていたときと全く変わりはない。
その欠片すら見えないほど衣類は整えられているけれども、シュリがこの城で遊んでいてここまで深く眠りに落ちることは一度もないし、目の縁が泣いたように赤いのは隠しようもない。
悪気もなくあっさりと返されて、しかしそれで納得するほどブルーも見た目通りの男ではない。
じろり、とキツい視線で推し量るようにモノクルを睨むと、仕方ないな、と博士は息を吐き、
「シュリが媚薬入りのチョコを食べてしまいまして」
「媚薬?!」
「はい、即効性の強いものでしたので」
その言葉に驚いたブルーにも、博士はなんでもないように淡々と事実を語る。
「まさか、貴方が・・・」
「いえ、私ではなく、シェリーです」
事実は事実であるが、余計なことを省いたそれにブルーは訝しんで目を細めて、
「シェリーは貴方の創った人形でしょう。貴方が創られたものが、貴方の意志に反することはないと思うのですが」
博士の創るアンドロイドは優秀だ。
未だ財産を投げ打ってでも欲しいという人間が後を絶たない。
つまり、シェリーがしたとしてもシェリーの意思ではない、とブルーは暗に含ませたのだが、
博士はそれに一ミリの揺れもなく微笑んだまま、
「優秀な子ですからねぇ」
と呟いただけだ。
「私を、呼んでくだされば・・・」
傍で話していても一向に目を覚まさない幼い少年を見下ろしながら、悔やみに似た声を出すブルーに、
「どうなさいますか?」
「え?」
いきなりかけられた声に驚いて振り向くと、笑顔の中に逸らせない凄みを込めた博士の視線とぶつかった。
「そんな状態のシュリを前に、貴方がどうなさるつもりだったのですか」
一緒に暮らし始めて今日まで、もう家族同然の暮らしをしているけれどシュリとブルーの状態はそれだけだ。
それ以上には、なることはない。
すでに大人の男を知る少年に、ブルーはずっと保護者の立場を貫いていた。
単調に聴こえる博士の声に、しかしその言葉にブルーは身体を固める。
「貴方が、慰めて、あげるのですか」
一語一語を区切りつつ、はっきりと言う博士の声にブルーは俯いた。
その顔を見て博士はすっきりとしたのか、
「シュリの意識はすぐにない状態でしたし、夢だったと思うかもしれませんね」
気休めだと思いながらも口にした。
気休めだ、とそのまま受け取ったブルーは、シュリの赤くなった目元と幾分ふっくらとしてきた頬を撫でて眉根を寄せた。
答える声は、ないままだった。


性行為の初めてではないシュリがそれを忘れることはやはりあるはずもなく、それがまたブルーとの間を歪ませることになるのだけれど――それはまた、別の話。


fin



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