四葉日記1 −深津−





元々、僕は日記を付けることはないのだけど、店の日誌には日々コメントも書き込んでいるから、それが日記になるのかもしれない。

一月末日。

海ちゃんが自分の過去の日誌を見て笑っていた。
スタッフ一人ひとりに、日誌をつけることを義務付けているのは奥先生のもとに居たときからの習慣だった。
それが後日、役に立つからで、僕もなんとなく、3年ほど前の日誌を手に取った。
3年前の今日、ああ、雪が降って喜んだことを覚えている。
そのことを記した下に、
「航さんが楽しかった、ストレス発散できた、とのこと」
と自分の字で書いてあった。
僕は首を傾げて、記憶を呼び起こす。
しかし、3年前の記憶がすぐに戻ってくることもない。
何をしたのだろう、と少し胸が騒いで、帰るなり航さんに訊いた。
「ああ、シャンパンファイトした日だろう」
3年も前のことなのに、航さんは考えることもなくあっさりと答えてくれた。
言われて、ガーデンパーティの催しでスタッフも巻き込んでしたことがあったのを思い出した。
なんだか、僕は面白くなかった。
考えても、思い出そうとしても、僕は無理だったのに、航さんは迷うこともなく答えを出した。
なんだか、そう、悔しかった。
「おい、深津?」
僕は航さんの声も無視して、一人でベッドに潜り込んだ。


to be continued...



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