| 夕日 休日に、久しぶりにドライブに出た帰りだった。 街並みの向こうに、太陽が沈みかけている。 深津は助手席からそれを眺めて、昔を思い出した。 航太郎と出会って、意識して、想いを告げられて、初めて一緒に帰った日。 まだ高校生の幼いときだった。 話したいことがあるようで、気だけが急いて言葉にはならず、しかしそれでも離れたくない、と願って公園のベンチで二人で並んで座ったあの日。 時折指先が触れることすら、顔が染まって慌てていた。 「綺麗だな」 俯いていた深津は、航太郎の声に視線を上げた。 ベンチから見える、住宅の向こうに日が落ちようとしていた。 航太郎の言葉は、深津の気持ちそのままだった。 頷いて、思わず微笑んだ。 「・・・空が、溶けているみたいですね」 見慣れたはずの夕日が、とても綺麗だった。 深津の言葉にも、航太郎も笑った。 視線がそのまま絡み合って、どちらからでもなく顔を寄せた。 夕日に染まった、触れるだけの唇。 初めて、想いが触れた日のことだった。 深津は夕日に染まる車内で思わず微笑んで、 「航太郎先輩」 丁度信号で車を止めた航太郎は少し驚いて助手席を振り返った。 「・・・空が、溶けているみたいですね」 少しだけ目を見開いて驚いた航太郎も、同じ思い出を思い出したのか目を細めた。 「キスを強請ってるのか?」 揶揄うように口端を上げたけれど、深津はそれに深く笑んで、 「先輩がくれるなら、なんでも」 航太郎もどうしようもないな、と苦笑して、信号を一度確かめてシートベルトを外した。 身体を助手席に乗り出して、夕日の中で顔を寄せ合った。 「このまま溶けてしまいたいな」 啄ばまれただけの唇に、吐息で囁かれて深津はすでに溶けそうだ、と感じた。 信号が変わった瞬間に、シートベルトを締めなおして車を出した航太郎に、そっと手を重ねた。 深津はあの日から、気持ちが溶けっぱなしだ、と目を閉じた。 |
fin.