嘘寝





「痛くないですか?」
「気持ち良い」
ソファに座って、その膝の上に航太郎の頭を乗せていた。
幾分、窮屈かもと思ったけれど、航太郎はその言葉通り目を伏せて大人しくしている。
航太郎は耳掻きが下手だ。
いつも力任せにして――怪我をする。
見かねた深津がしてあげる、と言うと、ウキウキしつつその膝に頭を乗せるのだ。
航太郎のことをするのが嬉しい深津は、耳掻きを手に航太郎が、
「深津」
と呼ぶのが楽しみでならない。
「航さん?」
終わりましたよ、と声をかけても航太郎は目を伏せたままだ。
いつの間にか眠ってしまったのだろうか。
深津はそれでも困りもせず、むしろ顔を緩ませた。
その横顔を見るのに、深津は不意に思いついてしまった。
けれど、実行しようと身体を前に屈めたけれど足が微妙に動いてしまって、それではせっかく寝ている航太郎を起こしかねない。
深津は中途半端な姿勢のままで固まって、どうしようかと考えて自由な自分の手を見る。
その手に、口付けた。
唇の触れた指先を、そっと航太郎の頬に当てると、
「―――ッ、」
ふっと、堪えきれない、とそれまで穏やかに眠っていたはずの航太郎の顔が笑った。
「こっ航さん! 起きてたんですね?!」
「クックッ・・・ごめん、何かつい――ね、」
「つい、って・・・!」
「ごめんって、な?」
笑みを抑えられないのに、航太郎はゴロリ、と身体を上に向けて、恥ずかしそうに眉を寄せる深津に手を伸ばしてくる。
「手も良いけど、ホンモノが――いいな」
「・・・・・・」
深津は何かを言いかけて、しかし言葉が見つからないのか結局頭を近付けた。


fin.



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