ホラームービー






夜中にしていた洋画をなんとなく見続けた。
その内容があまり気持ちの良いものじゃない、と知りつつも、見始めてしまうと最後まで見てしまうのが航太郎の癖だ。
ふと気付くと、キッチンに深津が立っていて、グラスに真っ赤な液体を注いでいた。
「・・・深津?」
「航さんも、飲みます?」
それはなんだ、と聞き返そうとして、身体が止った。
グラスを掲げた深津が、あまりに綺麗で――怖いくらいの笑みで、喉を鳴らす。
「・・・・それ、」
躊躇して、それでも尋ねずにはいられない。
深津は一度グラスを見て、その鮮血のような色を確認して誰よりも綺麗に微笑んだ。
「綺麗なままでいる、秘密です・・・航さん、綺麗な僕のほうが、良いでしょう?」
「・・・・・」
その時、航太郎の脳裏を過ぎったのは――今見たばかりの映画の場面だ。
美しい肉体を保つために、豊満な身体の女が浸ったバスタブ。
その中に広がる鮮やかな液体は――赤色の体液だ。
「み・・・・」
思い出していると、いつの間にかキッチンにいたはずの深津が目の前で膝を付いている。
妖しさを漂わせて、誰よりも色っぽく微笑む深津は、本当に綺麗だった。
けれど、その手が航太郎の身体に伸びて――



「―――――ッ!」
航太郎は手の触れる瞬間に、身体をビクリ、と揺らした。
慌てて視界に入ったのは、なんの受信もしなくなったテレビ画面。
煌々と照らされているリビング。
ソファを背に床に座っていた状態で、背後のキッチンを振り返れば夜中らしく電気を消した変化のない場所があるだけだ。
「・・・・ゆ、ゆめ?」
航太郎が呟いた声は、確かに震えていた。
状況を理解すると、どうやら夜中に映画を見たままいつのまにか眠っていたようだ。
一人なのは、日付が替わる前に深津は先に寝る、と言って寝室に行ってしまったからだ。

いったいどこから夢だたのか――

そう思う前に、航太郎は不自然な格好で寝ていた身体を起こしてリビングを飛び出した。
「深津っ」
寝室のドアを開けて、片方のベッドで寝ていた細い身体を抱き起こす。
「・・・んん・・・? 航、さん・・・?」
完全に眠っていた深津はいきなり抱きしめられて、意識を覚醒させながらも首を傾げる。
航太郎はぎゅう、と存在を確かめるように腕に力を入れて、
「・・・頼むから、あんまり綺麗になるなよ」
「・・・・・・航さん?」
情けないな、と思うほどの呟きを、確かに聞いた深津が目を瞬かせても航太郎は腕を離さなかった。
そして、どこからか声が聴こえた気がした。

―――でも、綺麗なほうが好きでしょう?


fin.



INDEX