花酔






穏やかな気温の中で、斜面の芝生に座り見上げた空は、とても澄んで綺麗だった。
ヒラヒラと舞っているのは、少し離れたところにある桜の花びらだ。
「綺麗だな」
穏やかな春を感じていると、隣で寝転がっていた航太郎が呟いた。深津は視線を下げて、
「そうですね」
と笑った。
航太郎は寝そべったままで眩しそうに笑みを深くして、
「お前が、だよ」
「・・・・え?」
「前にNYに研修に行っていたとき、お前が会いに来てくれたのも、桜の時期だっただろ?」
「あ、はい・・・」
「噎せ返るような花の中で、お前が一番綺麗だった」
なんでもないことのように言った航太郎に、深津は体温が上がっていくのを確かに感じた。
「な・・・っなん、そ・・・」
「お前に酔いそうだ」
「航さ・・・・」
顔を桜色に染めた深津を、航太郎は自分のほうへ引き寄せてその酔いを確かめた。
重なった唇が離れると、深津はこんなところで、と睨みつけた。
けれど笑って受け止めた航太郎が、それも心地よいとしてしまうことも知っていて、もういいか、と自分もその酔いに浸ることにした。


fin.



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